Nu blog

いつも考えていること

スケッチ(カチューシャ)

年末の晴れた日に大掃除をしていると、懐かしいカチューシャが出てきた。

このカチューシャをして、高校生の時も大学生の時も勉強したものだった。会社に入ってからの私は勉強しなくなったから、カチューシャも使わなくなってしまった。

そう思えばこの小さな学習机で勉強してきたんだった。教科書を広げ、安物のMP3プレイヤーに少しだけ高いイヤホンで、当時流行っていたミクスチャーロックを聴きながら、何問も問題を解いて、英単語を書いて暗記した。今机の上は物置と化していて、ほとんど使われることはなかった。

マンションの階八、私の部屋は東向きだから、夏になると四時五時には空が明るくなり始めて、しばらくしたらもう朝日が差し込んでくるのだった。

雲が広がって向こうに見える山々も起き始める。車やバイクの音が少しずつ聞こえ始める。早起きの母親が静かに歩き出すのも聞こえる。その時間になってようやく私は少しだけ睡眠を取る。

数学の公式や世界史の年号、英単語や古文のいろいろが脳みそに定着することをイメージしながら眠りに落ちる。実際は、脳みそに定着せずボロボロとこぼれ落ちていったのだが。

三時間程度眠って、パンとコーヒーを流し込み、適当に着替えると家を飛び出す。その時間になるともう、世の中に寝起きの雰囲気はひとつもない。朗らかに一日が始まっているのだ。

勉強をしていた頃の自分を思い出す。テストの点数が悪くて落ち込んだ時も、良くて浮かれた日も。そして大学に受かったあの日、124単位を取り切ったあの日。今の私はそんな区切りのない生活をしている。区切りのあったあの日を羨ましく思う。

私はカチューシャを学習机の引き出しに戻し、また掃除に戻った。今年ももう終わる。来年も変わらず、私はのんべんだらりと日々を過ごす。