2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧
居酒屋なりに小綺麗にされた洗面所で手を洗いながら、酔ってしまったと考えていた。黒目が微細してるのか、視界が常にふらついて、脳みそが麻痺してるのもはっきり感じられた。でも、そんなふうに考えられるくらいには意識がある。この感覚を覚えていそうな…
『三島由紀夫vs全共闘 50年目の真実』を見た。 言葉の生きている世界にひさびさに迷い込んだ、と思えた。三島由紀夫も学生も、現実を表す道具として言葉を絞り出す。たとえば「机」という言葉を一つ発するためにも、実際の机を雑巾のようにぎゅっと絞って、…
五月一日、ワイシャツの襟がだらしなく垂れる。他のワイシャツに着替え直してみたが同じだった。おかしい、とミヤモトは思う。去年もクールビズが始まった当初、同じ違和感からセミワイドのシャツを着るようになって、それでどうにかなっていたはずなのに。…
浪漫革命の「恋は1/2」を聴いた。 リコメンドに出てきたので何気なく聴いてみたら、中華風のメロディにYogee new waves味のある甘めなハスキーボーカルが乗っていて上質。MVもらんま1/2をオマージュし、楽しげなチープ感がハマっている。 というように、ぼー…
ショーウィンドウの中にたくさんのサンドイッチが詰められている横をすっと通り過ぎて、聡子はフルーツサンドが好きだけど、自分はあんまり好きじゃないなとか考える。ちょっとずつ不安げな表情をした通勤者たちが行き交う朝の地下街で、フカミはシャツの袖…
悪名高いアマゾンプライムで『すべての政府は嘘をつく』『スーパーサイズ・ミー』『スーパーサイズ・ミー2』を見た。 悪名高いってのは松本人志や三浦瑠麗をCMに起用していた話で、解約運動などが起きたことを指しているだけで、深い意味はない。徴兵制を訴…
パソコンの画面を見続けていると今が昼か夜か分からなくなる。画面の右下に表示された時間を見ると、気がつけば夕方の四時だったりする。それで窓の外を見てみると、まだまだ明るいから、ずいぶん日が長くなったね、なんて雑談を少し交わしたりする。あるい…
学芸員の勉強をしていると、よく見かけた参考文献の一つに、梅棹忠夫の『メディアとしての博物館』がある。 ご存知、『知的生産の技術』の著者であり、京大式カードの生みの親である梅棹忠夫は、国立民族学博物館の館長として博物館学の発展にも寄与した人物…
改札前にはもう、ダイキとフトーがいた。「おーす。寒ない?」 フカミはよれよれの長袖シャツ一枚のダイキに声をかけた。「今は寒ない。着るもんなくてなんか羽織ろうとしたら、冬物しかなかったから」 フトーを見やると、こっちも黒いVネックの長袖シャツ…