Nu blog

いつも考えていること

スケッチ(酔っ払う)

居酒屋なりに小綺麗にされた洗面所で手を洗いながら、酔ってしまったと考えていた。黒目が微細してるのか、視界が常にふらついて、脳みそが麻痺してるのもはっきり感じられた。でも、そんなふうに考えられるくらいには意識がある。この感覚を覚えていそうな気もするし、さっぱり忘れてしまいそうな気もする。

こんなに酔うのは初めてだ。普段お酒を飲んだ時の酔った感覚をちょうど二倍にしたくらいの感じだ。

大西君と森美術館にアジアの現代美術を観に行くことになって、その約束の決まった二週間前からなぜか知らんがワクワクしていた。大西君と訳のわからんオブジェを観て、難しい顔をしたら笑ったりするのは楽しかった。その後六本木から恵比寿に移動して、カフェで駄弁ったのも楽しかった。

大西君は最近見たドラマやバラエティ番組の面白かったところや、毎朝一緒の時間に電車に乗っているおじさんの奇行とか、都電荒川線に乗ったことがないみたいな話をしてくれた。こちらも負けじと、最近あえて見まくってるYouTubeの面白いYouTuber、面白くないYouTuberの違いや、毎朝席に着くと大きな伸びと欠伸をする上司のこととか、山手線は一周してみたいけど都営大江戸線は一周してみたいと思わないみたいな話をした。

それで恵比寿から代官山へ散歩して、家具屋や古着屋を冷やかしたりした。代官山の店員は決して話しかけてこない。知り合いとは話し込んで、こちらには一瞥もくれない。そういうものなのだろうと思った。秋から冬になる頃で、冷えて乾いた空気が美味しかった。それから目に入ったこの小綺麗な居酒屋に入ったのである。

 

大西君が喋ってることにタイミングよく相槌やツッコミを入れつつ、頭の中ではずっと「よし、次はこんな話してやろう」とか考えていたら、店員さんがそそくさと「お次なに飲まれますか?」と聞いてくるのも相まって、いつのまにか四杯目をあおっていた。普段なら二杯から先はジンジャーエールにするのに、気分がのっちゃって、こんなことになった。

なぜか不意に今日の下着は人に見せられるものだったか気になった。ちらっと見てみたら、それなりに人に見せられるもののような気がした。まあ、もしそうなっても、すぐ脱いでしまうだろうし。

 

そうなることがあるのだろうか? 大西君の顔が近づくことを考えると、今の気分では笑っちゃうだけだろう。できればスマートに誘って欲しい。「ちょっとシテから帰る?」くらいのフランクさで、やらしくない方がいい。「ウチで映画見よう」とか「いいよね?」とか鼻息荒めに聞かないでほしい。ダメだと言われたら引いてくれるくらいの「いいかな?」なら、どうぞどうぞと差し出したい。

でもそれは大西君に限らない。たまたま本日大西君と盛り上がってるだけ。そして大西君はそんないきなり切り替えてスマートなお誘いができる人ではないように思う。

 

席に戻る。大西君はアホみたいな顔で「カズレーザーはすごいよなあ」などと話し出した。そのアホ顔に「ちょっといたしたいな」と思ってしまった。よし、五杯目を飲んでやろう!