Nu blog

いつも考えていること

スケッチ(視点)

実は私はサウナが好きではない。けど、彼がサウナ好きで、勧めてくるから、入ったふりをした。それがダメだった。もちろん私がダメなのだけれど、銭湯のロビーでホカホカしている彼に「すごくよかったよ」なんて言ってしまった。それで彼はしょっちゅう銭湯とか温浴施設へ私を誘うようになった。サウナ料金も払ってくれる。でも私はサウナには入らない。お湯に浸かるだけ。水風呂にはよほどのぼせた時は浸かるけれど、大抵は桶で体にかけるくらい。それで十分。サウナ室に入ったことがないわけではない。そんな食わず嫌いはしていない。あの熱気、湿度、皮膚が焼かれる感覚。総合してペケだ。そんなことを彼は知らない。彼は私もサウナが好きだと思っている。

 

あの子、サウナーなのかな。サウナの利用料金を払った人は、手首に紙のリストバンドをつけてもらえる。あの子もつけてるから、そうなはずなのに、一度もサウナに入っていない。私の方が先にいて、常にサウナ室の動向に目をやっているから間違いない。不思議でしょうがない。温冷交代浴をして出て行った彼女の背中を見る。

 

サウナで一緒になった男がロビーにいた。誰かを待ってるのか、スマホをいじっている。女湯から出てきた女の子が「お待たせ」と上気した顔でそいつに声をかける。彼女待ちかよと思いながら、コーヒー牛乳を買って飲んだ。「サウナ良かったねー」なんて会話。カップルでサウナ好きなんて憧れる。