Nu blog

いつも考えていること

日記

8/15 笛美「ぜんぶ運命だったんかい」を読む。郵便局のエピソードで冷める。そんなこと言う金融機関の人間はいないと思う。でもいたんだろうから仕方がない。文章というのは何もしなければどんどん暗くなる、とは保坂和志の言葉だったと思うが、この人の文章はまったくそのとおり、どんどん暗くなっていく。暗いことは悪いことじゃない。実際こんな暗くなるくらい日本社会はミソジニーに覆われている、と言われればそれまでだが、暗さの中に光みたいなものがなくて、悲しかった。言われてみればタイトルから暗い。運命という言葉に宿るネガティブさ。

8/19 イ・ミンギョン「私たちにはことばが必要だ」を読む。なんと、まばゆい本だろうか! 古典となる風格を携え、静かに佇む本である。怒りに打ち震えながら書かれていることがひしひしと伝わり、そのことがこれほど他者を鼓舞するとは。もちろんこんな反論が不要となる社会が来ることが第一ではある。しかし、未来にもマイノリティは存在してしまうだろう。その抑圧される側の人にも、たとえ立場が違っても必ず役に立つ本。その意味でいつまでも読み継がれてほしい本。

8/28 模様替えをする。テレビやソファの位置を変えた。裏側に溜まっていた埃を掃除した。きれいになった。

8/29 バイク川崎バイクの短編集「電話をしてるフリ」を読む。書くのが好きなんだなあと自分を棚に上げて思う。それにしても、なぜお父さんは他人の電話には出るのか? ショートショートは読後感があればよいから、そういう謎は解決しなくてもいいのかもしれないが、どうしても引っかかってしまった。

9/3 小熊英二「社会を変えるには」を読む。小熊英二を読むと決めた一年だったが、とにかく分厚くて参る。まだ全著作の1/3くらいだろうから、今年では無理だろうな…。と思いつつ、面白いから仕方がない。

金曜ロードショーが「ジュラシックパーク」。全てが完璧な映画だと思った。

9/4 馬喰町にある週に一回しか開かない家具屋に行く。中古を扱うお店で、潰れた旅館とか古民家から持ってきたものを上手に、魅力的に展示してくれる。玉のれんを買う。我が家は古き社宅で、クラシカルな玉のれんがよく似合った。ジャラジャラとくぐり抜ける嬉しさ。

そのまま東京駅の藤戸竹喜を見る。木彫りのクマ。作者不明のクマが可愛らしかった。

9/5 前日に行われた藤井風のライブのアーカイブ配信を見る。MCの声が小さくて、聞き取りにくかったが、雰囲気相まってスピリチュアルな印象。このスピリチュアルさが歌に反映されて魅力になってんだろうなあと思う。雨の中、広いスタジアムで独演、独唱。こんなめちゃくちゃな状況に耐えうる実力を恐ろしいと思う。

昼から映画「サマー・オブ・ソウル」を見る。伝説の音楽フェスティバル、ハーレム・カルチュラル・フェスティバルのドキュメント映画。ニーナ・シモンが「必要なら殺す覚悟はできているか」と問うシーンは震えた。そしてクレジットが流れ終わったラストシーン、スティービー・ワンダーがお付きの白人に「もういいだろう?」とショーを終えるよう促されるのだが、それに抗するシーンが流される。「スーツを引っ張らないでくれ」と言われて「そのスーツは僕が買った」と言い返して映画は閉じる。かなり衝撃的なラストだった。