Nu blog

いつも考えていること

映画『とんかつDJアゲ太郎』

とんかつDJアゲ太郎』を公開初日に観た。

そもそも2017年11月に発刊された最終巻で実写映画化が発表され、その後なんの音沙汰もなく、丸2年が経過。定期的に「アゲ太郎どうなったんだろうね」なんて会話を夫婦でしていたところ、2020年1月末に突然公開の報が舞い込んで、狂喜。いやしかし、何があったの?

その2年の間に何があったのか知ることはできない。ハリウッドだったら、DVDの特典映像で出演者と監督がプロデューサー陣の悪口を言いまくって裏事情がわかるのだが、そうはいかないんだろう。我々がその空白の期間を知ることはないのである。

などと思っていたらコロナ騒ぎで6月の公開が延期。緊急事態宣言解除直後で映画館も再開するやしないやという時期だったから仕方がない。10月まで延期と発表されたと思ったら出演者の伊勢谷友介大麻で逮捕。撮り直しはしないという決断にまったく異存はないが、さらに公開前日に出演者の伊藤健太郎がひき逃げ。どんだけトラブルが続くんだ、この映画は。まったくわけがわからない。

そんな不運に見舞われているからこそ初日に観に行ったのに、どうも内容にモヤモヤさせられてしまうところが多かったのがもっとも残念であった。

原作およびアニメ派としては以下の点が不服。

・「とんかつ屋とDJっておんなじだったんだー!!!!」のインパクトが薄い

・ていうかDJビッグマスターフライと父親が重なるシーンがほしかった

・そして「フライヤーってうちにあるあの?」がなかった(おしぼりさんがいない…)

・そうそう、とんかつとDJの類似点に気づいていくあの衝撃が割愛されすぎなのだ! 千切りと同じBPMとか、皿とか、職人とか、漬物とディグとか、そういうほぼこじつけな類似点の発見こそがアゲ太郎ではないのか

・ミキサーも質屋で105円で買うのがおもしろかったのになあ

・最初にみんなと踊り狂うのはジューシーアンドクリスピーだったのに、それもうやむやだったのは残念

・初陣は大失敗じゃなく、音を止めてしまったけど油裂音に救われてレイニーレニーで爆上げ、っていうのが感動だったのに、大失敗からなぜか苑子ちゃんに励まされて大成功ってのはどういうこと?(苑子ちゃんの存在、都合よすぎん?)

・ラスト、三代目たちのラップってのはなんだったのか。自分らの職業の服着てないのに自己紹介ラップされても意味わからんのでは? たぶん、上野編で出てきたいんきさんから拝借したイメージだろうが、ちょっと雑すぎて…

 

一本の映画にまとめることが至上命題とはいえ、憧憬、挑戦、挫折、復活、努力、成功を原作からちょいちょい拝借して作ってしまうのはいかがなものか。というのも、アゲ太郎というのは無理矢理なトンカツとのこじつけで、失敗を回避したり、すぐリカバリーしたりするのがギャグ要素となっている漫画なのだ。綺麗な流れにまとめようとして、このギャグ的展開を捨て去ってしまったのがすごく惜しいと思う。

もしかしたら空白の2年間が影響して、無難な、フォーマット化された脚本になったのかもしれない。最終巻が刊行された時の勢いそのままに、とっちらかってていいから、原作の要素だけを詰め込んだはちゃめちゃなB級映画を作ってほしかった、と無責任に思うのでした。

エンドロールのアゲ太郎のイラストがかわいく、それだけが癒しだった。