Nu blog

いつも考えていること

日記

M-1

いつも順番は重要なのだが、今回は順番が順位を決めたと言ってもよさそうな大会だった。

カベポスター、真空ジェシカ、オズワルドとさざなみのような笑いが続いた。M-1の空気は重い。おもしろいのに笑えない、そんな時間が続く。

このあたりで渦のような笑いがほしい、そんな気持ちにロングコートダディさや香がハマった。ここが男性ブランコだったら、あるいはヨネダ2000だったら、と思わずにはいられない。

反対に、10番手となったウエストランドは、ダイヤモンド、ヨネダ2000、キュウら点数の上がらない流れを打ち破った。ヨネダ2000、キュウという変化球的な漫才が続いたことも影響したように思う。

それだけでなく、ミルクボーイのように、同じ形でネタを量産できるところも強かった。2本目、同じフォーマットなのに飽きさせなかったのが勝因だった。いま見れば2本目はややお笑い好きへのメッセージが強くて、1本目にあったような懐の広さがないのだけれど、優勝はウエストランドで間違いなかった。

それにしても「やっぱりウザい!さすがにみてられない!再生数に取り憑かれておかしくなっている!若くして大金を得てるからまともではない!それが明るみに出始めている!警察に捕まり始めている!」の流れはおもしろすぎる。クイズと言いつつ当てる気が一切ない。なんなんだ、「それが明るみに出始めている!」って。

見直してみれば、さや香の運転免許返納のネタは、序盤がピークであとは声量という力技だったし、2本目も優勝コンビのネタとは思えなかった。大人の関係がどうしたこうしたというネタは品がいいとは思えない。

1本目の1位はロングコートダディのマラソンの発想の豊かさにあげたいように思う。もしくは真空ジェシカのインテリジェンスも文句なしだった。もちろん、ヨネダ2000のありえないほどのイマジネーションとチャームも。

ゆえにロングコートダディの2本目はちょっと弱かったなあ。もう一回マラソンしてもよかったのではないだろうか。

まあ、ウエストランドに言わせればすべて「皆目見当違い」ということになる点含め、M-1の一つの到達点を見たような気がする。

人を傷つけるor傷つけない、みたいな論も盛り上がっているようだが、そもそもウエストランドは自分たちがこの世界に馴染めていない怨嗟を述べているので、もっとも血を流しているのは本人らのように思う。2年前のM-1で見せた「かわいくて優しい女の子なんていない」「背の低い女子は背の高い男子が好きで、背の高い女子はもっと背の高い男子が好き」というような男性目線の異性愛中心主義はナンセンスで、先に述べた怨嗟の「悪い」表出なのだろうと思うし、それらはちゃんと受け入れられずに終わっている。今回も1本目のネタの終盤にサラリと言った、若いのに高級な寿司をインスタに載せる女子やサウナに入るグラビアアイドルあたりはやや危うく思った。そこを中心にディスっていたら、受け入れられなかっただろう。今思えば「恋愛映画がワンパターン」もさほどハマっていなかった。ただただYouTuberならバカにして良い、という穴場のコンセンサスが爆発しただけだったのかもしれない。

これからはヨネダ2000のような、新しい感性に活躍してほしい。審査員が「女版ランジャタイ」などと評していたのはいただけない。あれこそ人を傷つける発言だろう。ヨネダ2000にジェンダーを持ち込むことほどばかばかしいことはない。解き放たれたイマジネーションは、性別も国境も越えていくはずだ。

・朝ドラ『ひらり』

再放送を観ている。相撲部屋が出てくる朝ドラ。脚本は内館牧子。めちゃくちゃおもしろい。高校横綱になり一度は入門を決めたものの、やはり辞めることにした久男が、土俵で力士らにぶつかり、力の差を知ることで入門を決める。「いま敵わない」ことに希望を見出す。なんだかこちらまで奮い立つエピソードだ。

お母さんの主婦問題はフェミニズムそのものだし、お姉さんの悩みもまた当時を感じさせつつ、今にも通じるものがある。まだ20話にもいっていないのに、あらゆることを盛り込み、シリアスでなく、笑わせてもくれる。感動だ。これからもまた楽しみだ。

・昨年読んだ本のこと

全然まとめてなかったので、よかった本のタイトルだけでもメモしとこうと思う。

ガケ書房の頃』、『母親になって後悔している』、『シソンから、』、『ほんのこども』、『フィフティ・ピープル』、『おいしいごはんがたべられますように』、はらだ有彩の本、『カルチャーセンター』、『はじめまして、現代川柳』、『俳句は入門できる』、『君の顔では泣けない』、『フルーツポンチ村上の俳句修行』。

昨年は、十年越しにようやく詩について真剣に考え、書く時間を持ち始めた。並行して関心を持った川柳もなんだかよく作用しているように思う。

・その他

年末、silent一気に観た。評判のよい作品だったが、ハマらなかった。そういうこともあるだろう。どのようなお話の展開になるのか知らなかったのだが、どう考えても、この二人がくっつくんでしょ?と思って見てしまって、要はこの人とこの人は当て馬だなとも思ってしまう。当て馬もいなくてはならない存在として書こうとしたのはわかるが、単に回想シーンが多いだけで、回想というのは、都合の良いことをいくらでも描ける装置だから、信頼できない。嘘の回想かもしれない。そんな性格の悪いドラマではないからなおのこと苛立つ。性格が良くて、友人との交流をたやさない、登場人物の皆さんを見ていると、自分の中にある根暗な部分が刺激されてしまう。高校時代を振り返って、きらきらしていなかったこと。きらきらしていたと振り返ることができる人に対して、完敗。取り返しのつかない私、という腹立たしさ!

岡本太郎展や大竹伸朗展に行った。あんまりハマらなかった。府中市美術館が気になっている。

YMO高橋幸宏が亡くなった。そのニュースを見た朝、悲しかった仕方がなかった。

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