雲ひとつない青空に
下半分
欠けた月の見える朝
大きな犬がてとてとと
散歩するのとすれ違った
狼のような耳をして
従順に飼い主のそばを歩いてた
私の前をゆく翁が
落ち葉を踏みながら
石段を登っていた
ひとつ
またひとつ登る
格子柄のジャケット
羽のついた帽子
翁の尻を見上げ
私もまた
敷き詰められた落ち葉を踏み
かさかさと音をたて
石段を登った
目線の先に
鉄風に吹かれ揺れる蜘蛛が見えた
巣は風に壊され
残された一本の糸に縋っていた
きっと今日のうち
蜘蛛は地面に落ちるだろう
誰か運の悪い人の頭や風に乗るかもしれない
それから蜘蛛は移動し
またどこかに巣を張るだろう