Nu blog

いつも考えていること

詩「風」

雲ひとつない青空に
下半分
欠けた月の見える朝
大きな犬がてとてとと
散歩するのとすれ違った
狼のような耳をして
従順に飼い主のそばを歩いてた
私の前をゆく翁が
落ち葉を踏みながら
石段を登っていた
ひとつ
またひとつ登る
格子柄のジャケット
羽のついた帽子
翁の尻を見上げ
私もまた
敷き詰められた落ち葉を踏み
かさかさと音をたて
石段を登った
目線の先に
鉄風に吹かれ揺れる蜘蛛が見えた
巣は風に壊され
残された一本の糸に縋っていた
きっと今日のうち
蜘蛛は地面に落ちるだろう
誰か運の悪い人の頭や風に乗るかもしれない
それから蜘蛛は移動し
またどこかに巣を張るだろう