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いつも考えていること

ラグビーW杯鑑賞記

ラグビーがこんなにみなさんの注目を浴びるとは・・・。日本で行われる初のラグビーW杯。興奮しているのは私一人だけかと、チケットを確保した2年前からやきもきしていたのですが、いざ始まってみれば、老いも若きも、にわかも数十年ぶりのファンも、とにかく多くの人を、世界中の人を巻き込んだ盛り上がりに感動です。

9月20日から1ヶ月弱に渡って繰り広げられた予選プールも終わり、とうとう明日からはベスト8の戦いが始まります。

正直な所を申し上げますと、大会開催前は日本代表がベスト8にあがるとは思っていませんでした。

最大の(嬉しい)誤算はアイルランド戦。まさか、勝つとは。

アイルランドはその前週、スコットランド相手に完勝していたのです。完璧なラグビーを展開していたので、日本はどうやれば点数が取れるのか、と勝手に一週間頭を悩ましていたくらいで、私の予想では27対15くらいの負け、だったのですよ。

2018年年間最優秀選手のSOセクストンが出なかったことなど関係なく勝ったなという感じで、とにかく驚きでした。

サモア戦もスコットランド戦も完璧な試合運びで、大会前の南アフリカ戦で見せた「弱点」はなんだったのか…?という感じ。あれはもしかすると各国首脳陣を騙す罠だったのではないかと思っているくらいです。

ノックアウトステージでも、南アフリカ相手にまた驚かせてくれることを信じています。

私は準決勝2試合のチケットを確保しています。ぜひ日本代表がウェールズvsフランスの勝者とぶつかりあう場面を観られたらと期待しています。ドキドキ。もし、そんなことになったら・・・。想像しただけで泣きそうですね。

 

予選プールの感想を日記的にしたためてしまいました。日々書き足していったため、読みにくいところはありますが、ここは勢いに任せたい。

 

9月20日。開幕戦、日本vsロシア。とうとう始まる。仕事を定時で終わらせて、有楽町のファンゾーンへ駆けつけるとすでに人がごった返していた。もしもガラガラだったらと、やきもきしていたのが嘘のよう。むしろ大混雑。その光景だけで感極まって涙が出そうな気分。運営側も慣れておらず、売店などの長蛇の列を捌き切れていなかったところは、初日ということで大目に見たい。その後改善されたかどうか確認できていませんが…。さて、前半、細かなミスで波に乗れない日本。先制トライをロシアに奪われ、緊張が走る。ネガティブなことは言いたくないがトゥポゥのハイボールへの対応には不安が大きかった。それを期待されての起用にもかかわらず…。しかし、松島の2トライできっちりリードして前半を折り返すあたりに、国際試合慣れした日本代表の強さを感じる。また、ロシアの攻撃が恐ろしかったかといえばさほどではなかった。これは日本代表のディフェンスへの意識の高さによるものだ。後半。前日メンバー表を見ている時に活躍しそうだと思っていたラブスカフニがボールをもぎとり、そのままトライ。密集付近での随所に渡る活躍も冴えており、個人的にはマンオブザマッチである。その後、松島が3トライ目を得て、ハットトリック。素晴らしい記録である。松田や山中、そして個人的に私の好きな具と坂手も出場。プレイ時間が短く、活躍とはまではいきませんでしたが、ジェイミー・ジョセフ監督のゲームプランにこの2人がいることを確認できて嬉しい。30対10で勝利。この後のW杯の盛り上がりを予感させる試合となった。

 

9月21日。強豪国の初戦が目白押し。私は横浜へニュージーランドvs南アフリカの観戦に。6万もの観衆が詰めかけて、大混雑である。翌日記事になったが、運営に不慣れな点が散見された。ビールの売り子が大量にいながら、ソフトドリンクや食べ物の販売には人員も物量も欠けており、行列が解消されなかった。私は最初に購入したコーラをちびちびと飲んで、なんとかやり過ごした。お手洗いも並ぶため、ビールをガバガバ飲むのははばかられた。また、クレカの通信に時間がかかっている様子も見られた。エアペイみたいな外付けの機械で通信に時間を要したのではないかと思われる。現金がもっとも早い。日本らしいといえばそれまでだが、外国からの観客は困っただろう。さて、試合。いや、その前にハカ。カパオパンゴ。初めて生で見るウォークライ。正直なところ豆粒だったから、家に帰ってからテレビで観た方が迫力があった。しかし、その場にいたという事実を大切にしたい。南アフリカファンによる「オーレオレオレオレ」の大合唱がうるさかった。そういう妨害は珍しくないらしいが、少し萎えた。全国の少年少女よ、ハカを見たければ相手国の代表選手になるのが一番良いぞ。観客席から見るハカはただの豆粒だから。よし、試合について。生で観戦した感想は高度な現代ラグビー。戦略戦争であり、それがミスキックなのか狙ったものか、何をどの程度狙い、成功したのかどうか、正直なところ判別がつかない複雑な試合であった。周囲の人々もかなりラグビーに詳しいと思われたが、「今のはどういうことだろう?」と首を傾げつつ、その後(たぶん)正解を示される展開で、興奮するというより唸らされるという感じであった。テレビで見直すと割とわかりやすい場面も多かったし、前半のトライがどのように生まれたのか、理解しやすかった。どうも生で見ていると情報量が多くて整理がつかない。大きな点差が開かないジリジリとした展開の中でボーデン・バレットとリッチー・モウンガのダブルSOが機能し、リードを保ったオールブラックスの勝利となった。南アフリカは後半、今ひとつ爆発することができなかった。これまたディフェンスの重要性を感じる試合であった。また、もしかすると今大会はオフロードパスを多用することが命取りとなるかもしれないと感じた一戦でもあった。後のイギリスvsアメリカでも同じことを感じたのだが、「理想的な形でアンストラクチャーを作る」という一見矛盾した発想がトレンドにあり、オフロードパスによって十数メートル稼ぐことの価値が低くなっているのである。むしろそのミスにより、インターセプトなどが発生し、意図しないアンストラクチャーが発生することを嫌う傾向にある。これはかなり重要なことだと思うので、ノックアウトステージでも注目していきたい点である。

さて、そのほか、オーストラリアvsフィジーとフランスvsアルゼンチンが行われた。フランスvsアルゼンチンもひりつく試合で、終盤のドロップゴールが勝敗を分けた。先ほども書いたが、今大会はディフェンスが鍵を握る。そしてオフロードパスは命取りである。その点でアルゼンチンは少し乗り遅れているように思われる。攻撃的といえば聞こえはいいが、波に乗れば大量得点、乗れなければ失速、というのでは高度な現代ラグビーで勝つことは難しいのではないか。サモアやトンガなどアイランダーにも言えるが、いかに堅実に、真面目に、面白くないラグビーをやるかが勝率を高めるように思われる。その点、日本のラグビーは(期せずして?)現代ラグビーのトレンドにマッチしている。

 

9月22日。アイルランドvsスコットランド。日本と同じプールの上位2国である。南アフリカの監督エラスムスにいたっては「どちらが我々と当たるだろうか」などと日本のことはアウトオブ眼中。まったく、もう。アイルランドが終始優勢に進める展開。FWががっちがちにスコットランドを圧倒したのでどうしようもない。スコットランドはキックからの攻撃が機能せず、まったくいいところがなかった。日本が勝てないスコットランドを完膚なきまでに叩きのめすアイルランドに、日本はどうやって勝つんだろうと私は呆然としてしまった。むしろスコットランド戦への希望は見えた。日本もきっちりと圧力をかければ勝てる。勝ち方を見せられれば、勝てる気がしてくるものである。

イングランドvsトンガ。ついに前回大会日本を率いたエディ・ジョーンズ監督のお出ましだ。前評判の高いイングランド。偉そうだが、お手並み拝見である。まったく危なげない試合展開。着実に点数を重ね、知らぬ間に35点。一方トンガはペナルティゴール1本だけ。イングランドにとってパーフェクトな試合となった。以前からエディは「1試合ごとにギアを上げていき、ピークは決勝戦」と豪語していた。実際そのようにプランニングしているのだろう。この試合で見せたラグビーが序の口なのであれば、やはり優勝候補であることは間違いない。

 

9月25日。釜石で行われたメモリアルな試合となったウルグアイvsフィジー。今大会初の番狂わせである(この言い方がのちに日本がアイルランドに勝つことの布石となったように思うのは私だけか。つまり、この番狂わせを「初」と称することで、今大会には何度か番狂わせが発生するぞ、という宣言がなされたのではないか)。ウルグアイはひたむきなラグビーを展開した。一方でフィジーはボール付近の選手以外の足が止まっており、言い方は悪いが誠実さに欠ける試合となった。むろん、中3日の日程は厳しい。移動距離もあっただろう。その点を考慮すれば精一杯やったと言える。しかし、釜石という地でウルグアイにひたむきなラグビーを見せてもらえた。このことに感動を覚える。観客席には幼稚園児からご老人まで、皆両チームの健闘を称えていた。素晴らしい試合であった。

 

9月26日。イングランドvsアメリカ。イングランドは中3日での試合。エディ監督としては、前回大会で日本代表が中3日でスコットランドに負けたこともあり、ここの準備は万全にしてきたであろうと思われる。最後の最後までほぼ完封。最後はアメリカのトライが生まれ45対7でフィニッシュ。この最後のトライは素晴らしかったですね。あくまでも試合を続けるイングランドとそれに応えてファイトするアメリカ。レフリーもある意味空気を読んだのではないか。イングランドはこれまで0点ゲームをしたことがないらしい。そのことに、相手にもしっかりと攻めさせる、横綱相撲、発祥国としての懐の深さを感じさせるし、ラグビーの持つ紳士的な姿を思わせはしないだろうか。もちろん、アメリカのトライはアメリカの実力であって、イングランドがあえて与えたわけではない。しかし、イングランドがそうしたアメリカの実力を最後の最後に引き出させたように見えた。素晴らしい試合である。神戸という地で、つまり平尾誠二神戸製鋼というラグビー所縁の地でそのような高潔な試合が展開されたことに静かな興奮を抑え切れない。

 

9月28日。日本vsアイルランド。負けると分かっていても見なければならない。そんな気持ちで見始めた。大変失礼かもしれないが、本音はそうであった。試合後、田村優も「勝つと信じているのは僕たちだけ」とジェイミー・ジョセフに言われたことを明かしたが、実にそのとおりなのである。むしろなぜジェイミー・ジョセフ監督はそんなに勝利を信じられたのだろうか。むろん、ハードな練習、緻密な戦略、積み重ねた3年間といった裏付けあってのことだろうが、私たちにはその裏側がわからない。まったく「静岡の衝撃」と呼ぶにふさわしい試合であった。前半12対9で折り返した時には、日本はノートライ。一方アイルランドはシンプルな攻撃とゴール前における多彩なオプションを見せて2トライ。普通に考えて、後半も同じ展開になることが予想される。つまり、24対18くらいが妥当な結末。日本は1つトライを奪えるかどうかというところ。たぶん、ここまでの展開をジェイミー・ジョセフは描いていたのだろう。アイルランド相手に日本は20点以上は取れない。であるならば、前半10点以内、後半も10点以内。つまりディフェンスし続けることを想定していたのだろう。日本は後半、よく守った。アイルランドのシンプルな突進に対して、ゲインラインを突破されないねじ伏せるようなタックルを見せた。またセットプレーでも、前半35分、具くんの気迫溢れるスクラムでの勝利から一歩も引かなかった。またCTBの中村も攻守ともに活躍していた。オフェンス時にスペースへ走り込み、自分を殺して外を生かす献身的なプレーには感動した。個人的なマンオブザマッチは具と中村の2人である。もちろんマフィに代わり入ったリーチが日本代表に流れをもたらしたことも確かである。空気が変わった。すごい人である。トンプソンや、ムーア、ラブスカフニらの活躍も外せない。接点での激しさは彼らのおかげである。ラファエレやレメキらがハイボールへ対応できていたことも見逃せない。特にレメキと福岡は狙われていた節があった。しかし、相手の圧力に負けなかった。流と田中、両SHが冷静にゲームコントロールした点も評価されるだろう。国際試合慣れした成熟したチームであることをこの2人が体現した。田村、山中、松島らのことも語りたいが、彼らの活躍は周知の事実だろう。田村のことを考えると、申し訳なさでいっぱいになる。彼は実に多くのことを抱え、すべてを背負ってプレーしてくれている。私がスポーツ庁長官ならとりあえず3億円くらい払いたいくらいだ。とにかく、後半は常にゲームの主導権を握った。もちろんレフェリングへの対応もあった。アイルランドは前半のレフェリングから、接点で競ることに消極的になった。オフフィートやオフサイドに厳しいレフェリングだったからだ。それが結果として日本のポゼッションを高めた。ただ、終盤、日本がジャッカルをしかけるなど接点で積極的になった。その時レフェリングが緩くなったように思われる。あの時はヒヤヒヤした。もしかするとアイルランドが接点で積極的になるのではないかと思ったからだ。結果として、アイルランドはそれを修正する時間がなかった。さらに福岡のインターセプトが起きた。アイルランドは7点差以内の負けを受け入れゲームを切ることになった。ノックオンのアドバンテージがあったので無理して攻めるべきだったとは思うが、疲れや万が一(アドバンテージ解消後にミスして日本に点を取られるとか)を考えての判断だろう。まさかの勝利に列島が沸き立った。翌日、散髪に行ったらサッカーファンの美容師さんからもラグビーの話題を振られるほどの話題になった。思い返すだけで泣きそうだ。嬉しい。ありがとう。

 

9月29日。予選プール屈指の激戦となったウェールズvsオーストラリア。開始35秒、電光石火のドロップゴール。アドバンテージを得てのキックパスによるトライ。チャンスを確実にものにするウェールズ。レフェリングとの相性もあり、攻守ともに反則で停滞させられたオーストラリア。随所に光るものはあったが後半1点差に追い上げるまでなかなか光が見えなかった。フーパーとポーコック、ゲニアやビールの健闘虚しく、4点差での敗北。ニュージーランドvs南アフリカとは異なり、クラシカルな分かりやすいラグビーだった。その点で存分に楽しめた。ワラビーズのファンからすれば、レフェリングの一貫性に疑問符のつく試合だっただろう。スクラムとハイタックル、そしてオフサイドに対する判定には中立的に見ても不思議な印象を受けた(ほぼ全てやないか)。オーストラリアはこのままいけば、プールDの2位となり、ノックアウトステージでプールCの1位と当たる。たぶん、それはイングランドである。このような予想はしたくないが、ウェールズに苦戦したことを考えるとイングランドに勝つのは難しいかもしれない。そしてエディ・ジョーンズへのブーイングを考えると、殺伐とした準々決勝が眼に浮かぶ。楽しみである。

 

9月30日。このあと日本代表を待ち受ける2国による一戦、スコットランドvsサモア。もしここでサモアが勝ったら…などとあらゆる可能性を考えてみたり。結果としてはスコットランド、ボーナスポイントを得ての完封。前半の調子では4トライ取れないのではないかと思ったが、後半のサモアの息切れが激しく、突き放すことに成功した。神戸の会場はドームらしく、蒸し暑そう。ボールが滑ったというコメントもあった。またこの後、自国開催が有利すぎるという批判も飛び出すことに。中3日での試合は厳しい。やはりプールは4チームが妥当か。参加国も32カ国に増やし、プール数も8つにしてベスト16というのも悪くない。日程、会場確保が厳しいし、夢の対戦が生まれにくいこともあるが世界的なレベルの底上げにつながるはず。ワールドラグビーにはぜひ検討いただきたい。

 

10月2日。フランスvsアメリカ。台風の進路によってはW杯史上初の台風による中止、引分けとなるところがうまい具合に逸れてくれた。もし引分扱いとなっていたら、フランスが皮算用していた勝点5が2にされてしまうところ。この3ポイントの差は大きい。アルゼンチンにとって大きなチャンスとなっていた。結果として、アメリカの粘りに一時危ういところをなんとか振り切り、フランスは勝点5を奪取するにいたった。おつかれさまでした。アメリカのファイトも素晴らしかった。後半に連続トライを許さなければ、日本のように下剋上を起こしていたかもしれません。

ニュージーランドvsカナダ。バレット3兄弟揃い踏み。W杯史上2組目。兄弟揃ってラグビーをやり、みな代表選手となる。しかも、オールブラックスで。すごいことである。さらにさらに、3兄弟全員トライを決めて、家族ハットトリックとでも言えようか。それにしてもリーコ・イオアネは調子が上がらない。この雰囲気では決勝トーナメントでも控えに回るだろう。選手としての波がこうした大舞台に上手く当たらなかった。かわいそうだ。

 

10月4日。南アフリカvsイタリア。序盤から試合のイニシアチブを取る南アフリカ。イタリアのさまざまなアクシデントにより後半30分以降のスクラムノーコンテストに。中学生の試合みたいな中腰のスクラム、初めて見た。前半、2トライで折り返した南アフリカ。後半早々イタリアの素晴らしい攻撃。にもかかわらず、ゴール前で南アフリカナンバーエイト、ドゥエインを頭から落とすラフプレーでレッドカード、退場。17-3で凌いでいたのに、もったいない…。数的優位に続き、両軍共疲れ果てた結果、要所を抑えた南アフリカが7トライを奪うことに。南アフリカのウィング、コルビとマピンピのランニングとディフェンスは秀逸だった。特にコルビ、凄まじい運動能力。ああいった走りは、全国のラグビー少年少女の憧れになるだろう。ニュージーランドといい、南アフリカといい、ゲインメーターが半端じゃない。一撃のディフェンスと何度も繰り返す粘り強いオフェンス。上位国中の上位国の戦い方はやはり魅力的だ。

 

10月5日。オーストラリアvsウルグアイ。前半を3トライ、19-3で折り返すも端々で反則を取られるオーストラリア。どうも今大会はレフェリーとの相性が悪いようである。シンビンも2回。最終的には45-10としっかり点差をつけ、ボーナスポイントも得たが、ノックアウトステージまでに細かい修正ができるかどうか。

イングランドvsアルゼンチンは予想以上の点差に。というのも序盤、アルゼンチンにレッドカードが出てしまったことが大きい。これでは試合にならない。オーウェン・ファレルのキックの精度が悪かった。前半は一つも決まらなかった。後半、喝を入れられたのか、点差が開いて落ち着いたのか、ようやく決まり始めたが、イングランドにとって大きな不安要素となった。決勝トーナメント進出一番乗り。ただし、1位通過か2位通過かはまだ決まっていない。アルゼンチンは、フランスがトンガに勝つとジ・エンド。前回大会ベスト4の実力を発揮することなくW杯からの退場を余儀なくされる厳しい状況に。初戦の大切さを痛感する。

日本vsサモア。前半はペナルティゴールを決め合う展開からスタート。試合前、散々ボーナスポイントがどうだこうだと喧伝していたせいかツイッター上では「トライを狙いに行くべき」論が優勢。日本が勝つ前提でそんな偉そうな批評を垂れ流せる時代になった。彼らはこれまでのサモアとの戦績を見たことがないのだろう。サモアイエローカードが出て、その好きにラファエレのトライ。前半は日本のスクラムサモアに負けていた。また、レフェリーの密集における判定が厳密で、お互い果敢にボールを奪取しにいくチームのため、ペナルティが多めに。後半も同じ状態ならマズイぞと思う。てっきり日本代表が密集での競り合いを止めるかと予想していたら、そんなことはなかった。しかし、キックを中心とした組み立てで、敵陣で相手を走らせた結果、前半と同じように反則を取られても得点につながらず。これは1点でも上回っていれば勝ち、という戦い方であり、ノックアウトステージでかなり効果的だ。サモア戦が厳しくなることをきちんと想定し、アイルランド戦で見せなかった「本来の戦い方」、プランAを見ることができたのではないか。2本目のトライは後半13分、ラインアウトからのモールで、姫野。そうそう、後半は坂手に変わって堀江になり、スクラムが安定した。坂手贔屓の私としてはつまらなかったが、試合としてはかなり優勢に。点差が開いたことでサモアはペナルティを得ても、ゴールもスクラムも選べない状態で、消去法的にラインアウトをチョイスすることになった。得点を得る方法が限定されるのは案外つらい。的が絞られるし、精神的に優位になるからだ。結局後半32分経ってようやくトライを返すサモア。長い道のりだった。点差を7点と縮め、日本も気を引き締めなければいけない最終盤。お互い、後半20分台にトライを得たかった。場がヒリヒリしてくる。もちろん、日本としてはそれまでにサモアを走らせて体力を削った自信がある。トゥシ・ピシが元気なこと以外不安要素はほぼなし。ナナイウィリアムズの疲労などはかなりのものだったろう。ラスト5分のところで福岡が日本の3トライ目をゲット。ここからようやくボーナスポイント獲得の話が始まることに。とはいえ残り5分。どうするのか。無理か。無念。などと目をつむりかけたところ、7点差以内の敗北を狙うサモアの攻めが裏目って、日本代表のスクラムに。それまでに3回ほど組んでいた感触でスクラムの優位を確信していたので、余裕の4トライ目であった。時間的な余裕はなかったが…。日テレの放送を見ていたが、マニアックな永友さんの解説が良かった。シンビンの時間を使いたいのだろうとか、キックは右に外すなら修正できるとか、ゴチャゴチャ言ってて笑った。そしてアナウンサーは全然わかっていなさそうな反応。あるいはあまり知らない人の目線を大事にしたのかもしれないが、「そうですか」とか「はい」で終わらされたら、ちょっと面白くない。この放送の後でJ Sportsを見たら面白くて仕方がなかった。さて、個人的なマンオブザマッチ田中史朗。流も良い仕事をしたのはもちろんだが、3トライ目を生んだのは田中史朗だ。ちらっとブラインドサイドに目をやって、相手ディフェンスを牽制。さらにFWの突進も匂わせた上で、BKに展開。福岡にスペースを作った。SHに求められる基本的なスキルかもしれないが、並大抵の技ではない。

 

10月6日。ニュージーランドvsナミビア。ジョーディ・バレットがスタンドオフという布陣のニュージーランド。途中交代でペレナラがスタンドオフになるなど、オールブラックスファンにとってはユニークな試合であった。しかし、前半30分までだけを見れば10-9と、なんと1点差。さらにニュージーランドはシンビンで1人欠くなど一瞬不安にもなるような展開。だがしかし、後半に畳み掛けて計11トライ。特にペレナラのトライは白眉であった。オールブラックスはよく走る。ナミビアも健闘。良い試合だった。先制した際に映し出された監督の無邪気なまでの喜び方には笑った。皆同じ気持ちであった。前半30分、10-9の時の真剣な表情も良かった。果たして、あの監督はどんな試合を想定していたのだろうか。気になる。

フランスvsトンガ。大接戦。アルゼンチン戦に続き23-21というスコアになった。フランスもベスト8へ。アルゼンチンはフランスの負けを祈っていただろうが、復活ならず。トンガの集中力が素晴らしかった。80分間切れることがなく、後半になって、さらに高まっているようだった。反対に、フランスはどこか安定感に欠ける。この試合では後半、2度もTMOによるトライ取消があった。美しいオフロードパスの連続による突破も、少しの誤差で記憶にも記録にも残らなくなる。何かが欠けている。多くの人は経験だと指摘している。W杯前のチーム状況が分からないのだが、この不安定さでは決勝には残れないだろう。来週、イングランドvsフランスを観に行くが、イングランドが負けるとは思えない。しかし、フランスにもしっかり準備をしてほしいと思う。両軍共十分休養できるだけのインターバルもあるし、楽しみにしたい。

 

10月8日、南アフリカvsカナダ。開始20分でSHのレーナック(レイナッハの表記も)がハットトリック。W杯史上最速らしいが、普通の試合でもそんな早くにハットトリックを決めた人を見たことがない。速さ、足技、コース取り。見事だった。南アフリカのSHにはデクラークとヤンチースがいて両人とも調子がいいため、ノックアウトステージでの起用はないかもしれない。なおさら、この試合での活躍を喜ばしく感じますね。カナダは開始早々に戦意喪失。前半はディフェンスが崩壊し、ラグビーになっていなかった。開始17分で4トライを献上。47-0での折り返しはひどい。レッドカードも出される始末。つくづく、ラグビーはメンタルのスポーツだと感じる。特にディフェンスは、気持ちがなければ決して止められない。後半は立て直しが図られ、猛攻。J  Sportsの解説の方も言っていたが、前半何もしてないから後半もまだまだ元気。7点を奪い取ることに成功するも、10トライを奪われる大敗となった。南アフリカの層の厚さやフィジカルの圧倒的な強さを感じる一戦になった。フッカーのブリッツが、ラインアウト時にボールボーイへ笑顔でお礼を伝えていたのが印象的。交代時も深々とお辞儀をして笑顔を振りまいていた。きっとチームのムードメーカーなのだろう。フッカーというのは、そういう気のいい奴が多いと思う。今大会通じて言えることだが、試合後のユニフォーム交換など和気藹々としているのも素敵。そして、神戸での試合はこれで終了だそうだ。W杯も後半に差し掛かった。寂しくて仕方がない。この日、台風情報が刻々と更新され、プールAにとって運命の2日間とも言える12日、13日にぶつかることが予報された。「試合中止、引き分け」で順位が決まってはたまらない。順延してでも試合はやるべきだ。私の観に行くイングランドvsフランスも開催危機に。逸れてほしい。心から願う。

 

10月9日。スコットランドvsロシア。スコットランド快勝。2回ほどスローフォワードでトライが取り消されたのは悔やまれるが、それにしても快勝。SHジョージ・ホーンの活躍めざましく、ロシアボールのラインアウトからインターセプトしてトライしたシーンに驚き。ニュージーランドウェーバー南アフリカのレーナッハ、そしてスコットランドのホーンと「控え」とか「第3の男」とか「サブ」と呼ばれるようなスクラムハーフたちがプール戦終盤に現れ、チームを助けている。このレベルの選手でさえもレギュラーを取れないのか、と層の厚さに恐ろしくなる。彼らにとっては次回W杯に向けての、あるいは自身最後のW杯を飾る活躍なのかもしれない。今後の彼らの活躍に期待したい。それにしてもロシアは最初の10分だけだった。それ以降はボールを追いかけているだけと言っても過言ではない。スコットランドの2つのスローフォワードは、ロシアのディフェンスをやすやすと突破できたことに所以してると言ってもいいだろう。W杯初日の前に「日本とやれば、5回のうち1回は勝てる」と弱気なんだか強気なんだから分からないことがを言っていたが、こうした試合を見せられると、ここからの4年で世界の強豪とテストマッチを組んでもらえないと思う。そうなると、いつのまにかズルズルと弱ってしまい「5回やろうが、100回やろうが勝てない」ことになってしまう。奮起を期待したい。

ウェールズvsフィジー。開始早々、フライング・フィジーが躍動し、瞬く間に2トライを挙げて騒然。その後も集中は切れず、激戦を演出した。レフェリーにとっては難しい試合だった。前半16分で2枚のイエローカード、後半にも1枚で計3枚。グラウンディング時にタッチラインを踏んだか踏んでいないか、微妙なシチュエーションも発生した。どちらにしていても誤審とは言えないくらい困難な場面であった。キャプテンとのコミュニケーションが多く、異議申し立ても少なくなく、今後レフェリーにとっては教科書的な試合になるのではないだろうか。

アルゼンチンvsアメリカはアルゼンチン、爽快な勝利。前回大会のトライ王、ニコラス・サンチェスもトライを挙げた。フラストレーションの溜まる大会だっただろうし、結果には満足していないだろうが、2勝2敗で次回大会参加の権利を得られたことは大きな成果だ。

この日、いよいよ台風の進路が揺るがず、12日の昼に上陸、夜にかけて通り抜けることが確定。13日の試合には影響なさそうだが、12日は厳しい。日程を改めての無観客試合の検討が報道されたが果たして。

 

10月10日。ニュージーランドvsイタリア及びイングランドvsフランスの中止が決定…。致し方ないこととは言え…。今後さまざまな地域でW杯が行われることを考えれば、災害への対応をなあなあにするのは良くない。止むなしとは言え…。試合が見られないことに対して、納得はいかない。人生で一度というキャッチコピーは嘘じゃない。人生で一度しかないチャンスを不意にされた。プール戦にも順延を含んでおくべきだった。イングランド、フランスは順位に影響があったし、イタリアが番狂わせを起こしていれば、プール戦の結果が変わった。台風を同行することはできない。だからこそ、試合はどこかでやってほしかった。ただ無念。

 

10月11日。雨のオーストラリアvsジョージア。この一戦でジョージア代表のマムカ・ゴルコゼは代表を引退するそうだ。そう。プール戦の最終戦はただの消化試合ではない。あるプレイヤーにとって重要な一戦となることが少なくない。オーストラリアの選手はじめレフェリーとも握手を交わす光景を見て、W杯の重みを感じた。試合は雨でボールが手につかない展開。前半は僅差で折り返すものの試合は終始オーストラリアのもの。ジョージアは終始オーストラリアのペースに合わせるしかなく、自分たちのラグビーができなかったか。両チーム共見事なタックルを見せてくれた。

 

10月12日。台風の関係ない福岡でのアイルランドvsサモアアイルランドは前半レッドカードを出されて14人での戦いを強いられるも、易々と7トライを奪った。サモアの荒いプレーがレフェリーのお気に召さなかったようで、厳しい判定も多かったように思う。もちろんアイルランドにも等しく厳しかったが、結果としてサモアが割りを食った。フラストレーションの溜まる場面も多かった。ノックアウトステージでは、カードの少ない展開を願いたい。おもしろくないので。アイルランドはプールAを一抜け。明日の試合がますます運命の一戦に。ちなみに台風がちょうど通っている時間の試合だった。風と雨が窓に当たり、ガタピシ音を立ててビビっていたが、試合が終わると台風も過ぎて静かになった。本当ならば今頃、横浜から家に帰っていたのかと思うと悲しかった。

 

10月13日。釜石でのラストマッチ、ナミビアvsカナダが台風の影響で中止に。プール戦の結果に関係ないとはいえ、両国にとって重要な試合であることに変わりない。たとえ大会前にそれに合意してたとはいえ、納得いかない気持ちだけが残る。ぜひルールの見直しをお願いしたい。

ウェールズvsウルグアイ。前半まさかの1点差。ウェールズ余裕の勝利を想像したいので驚いた。流石に番狂わせまではいかず、最後は突き放されたがウルグアイのファイトは素晴らしかった。

そして、日本vsスコットランド。案外簡単に勝つのでは?orぼろ負けするのでは…?の2択にドキドキしていた私だが、そのどちらの予想も裏切る展開に。開始6分、簡単にトライを取られた時には焦った。負けたと思った。接点でうまくズラされていたし、密集でも負けていた。15分までスコットランドの時間だったが、不意に日本に流れが。福岡の見事なオフロードパスが通って松島のトライ。そして、密集や接点を修正し、オフロードパスを繋いで稲垣のトライ。このオフロードパスの印象がよかった。スコットランドのディフェンスラインが前に出たので、背後に大きなスペースが空き始めた。そこをすかさずラファエレが転がして、福岡のトライ。前半を21-7で終えるなどとは予想していなかった。後半、出鼻を崩す福岡のトライ。相手からボールをもぎ取ったのはすごかった。ここから後半15分までスコットランドの時間。素早く攻撃を続けて2トライ奪われる。互いに選手交代を挟み、我慢比べの時間帯へ。25分間、日本代表はよく我慢し、接点で強く絡んだ。ボールを奪えば、きっちりと前に出て、消極的な姿勢は一切なかった。貪欲に勝利を目指す日本によって、スコットランドの時間は削られた。28-21。堂々と渡り合って勝った。すごいことだ。これまでの日本代表は通常のテストマッチを自分たちを鍛えるためのものと捉え、W杯で強いチームを作っているように思う(PNCで優勝したけどね)。その点でマストウィンのティア1国と状況が違う。しかしまあ、それの方が難しい。それができればウルグアイもカナダとアメリカもやっている。これからの日本代表像、4年に一度じゃないラグビーの愛され方みたいなものを夢想したくなる夜だった。

 

さまざまなことのある予選プールだった。一言でまとめられるならこんなたくさん書かない。

一生に一度が、確かにあった。

そしてこれからベスト8が始まる。

全ての試合を楽しみたい。