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izumishiyou’s diary

いつも考えていること

新聞営業マニュアル

新聞の勧誘が来た。

祝日の昼下がりのことである。

ぼくは無防備なことにとりあえず扉を開けた。てっきり、すでに購読済みの朝日新聞の集金だと思ったのである。

「新聞、取ってますか?」という二十歳代前半と思しき、気の弱そうな青年の声は震えていて、ぼくに子羊を連想させた。

朝日新聞を取ってますよ」と言うと、「読売新聞なんですけど、もう一紙取ったり、できませんか?」と哀願口調で言う。

「すいません。二つ取るのは難しいです」

「そうですか・・・。契約はいつ頃終わりますか?」

「先月契約したばかりで一年は続くし、朝日新聞って決めているので」

「それはやっぱり本紙の意見が、とかですか?」

「ああ、まあ、そうですね。うん。朝日が好きなんです」

「そうですか・・・」

と言って彼は手に持っていたサランラップと洗剤をぼくに押し付けるように渡し「ありがとうございました」と言って去った。

何が何だか、である。あれで契約する人がいたら驚く。紙売ってるんじゃないんだから、あれじゃあ勧誘でしかなくて、営業とは言えない・・・。

と思っていたら、ちょうど結びの一番の直前になってまた来て、つまりかれこれ4時間もの間、彼はほうぼうをさまよっていたわけであろう。

同じことを言い、同じ理由で「追い返す」形になったのである。

 

新聞を愛してやまない自分としては、これはまずいと思う。

このままでは新聞のイメージが悪化するだけだ。

新聞のイメージが悪化するのはまだいいにしても、件の彼は契約をとれないまま営業所に帰り、叱られる。訪問した先でも運が悪ければ怒鳴りつけられたりするだろう。それでは彼が不憫である。

しかし、勧誘のマニュアルがないんじゃないか。ノウハウがなさすぎじゃないか。とも思う。あれで売れたら奇跡だろう。ただの紙を、毎月4000円出して買えと言っているようなもので、月1万円が携帯代に消えるこのご時世に、なんという徒労だろうか。

というわけで、新聞営業マニュアルをここに公表する。

残念ながら僕は営業の専門家ではないので有効性は保証できないが、しかし新聞を愛する気持ちは割とあるので、いくらかは参考にしていただきたい。

勧誘員の皆様に置かれましては、当記事を参考にした結果、万が一契約が取れた際にはご一報いただきたい。ご一報いただくだけで嬉しい。それはつまり、ぼくの家にやって来たあの子羊が一人いなくなった、ということなのだから、それだけでぼくは嬉しい。

 

まず、営業を「ニーズの喚起」と定義したい。

ということは新聞においては「新聞を取りたいな」と思わせなくてはならない。

決して「もう一紙取りませんか」などということを口走ってはならない。それはニーズの喚起ではなく、懇願、である。

ニーズとは「損することへの恐怖」であると捉えたい。

テレビを買わないとテレビが見られず、相撲が見られない!という恐怖からぼくはテレビを買ったわけであるし、布団がなければ寒くて眠れない!という恐怖からみんな布団を持っているわけである。テレビなんて見なくても支障ないよ、布団がなくても眠れるよ、という人はテレビを買わないし布団も要らない。

相撲が見られない!眠れない!という恐怖を回避するためにテレビを買い、布団を買う。

ならば何が怖くて新聞を取るのか。

今、新聞を取らない理由を探そうと思えば大量にその理由が見つかるだろう。

高い、読まない、意味ない、おもしろくない、偏ってる、ネットで充分・・・エトセトラ、エトセトラ。

それを打ち破るような「新聞の魅力」を伝えることで、新聞を取らないでいる現状が「損している」ということを教え、新聞の購読へつなげる。

これしかない。

 

しかし、新聞の勧誘員の皆様は新聞をお読みになるのだろうか。新聞の魅力をご存じなのだろうか、というのが今の僕の素朴な疑問である。

 

さて、新聞の魅力とは何か。

あるいは新聞を取らないことで生じる損失とは何か!

新聞の勧誘員さんには以下の切り口を参照として勧誘を行っていただきたい。

なお、参考にしたホームページを注釈に載せているので、他の切り口を探すにあたっての参考としていただきたい。

 

「新聞は読まれていないと言われていますが、20代の方で新聞を読んでいる人の割合ってどれくらいと思いますか?」

⇒「実は20代の方でも半数以上、大体53%の方が新聞を購読されているんです。読んでない、読んでないって結構言われますけど、実はみんな読んでるんですよね。ところで、新聞を購読されていますか?」*1(みんな読んでるって言われたら少し考えてもらえるんじゃないかという安易な発想)

 

「親から新聞を読むように指導されているお子さんとそうでないお子さんだと、たとえば国語の点数ってどちらがどれくらい高いと思いますか?」

⇒「実は新聞を読むお子さんの方が小学6年生の国語で17点も差が出たっていうデータがあるんです。算数でも11点の差が出たそうですよ。ところでお子さんはいらっしゃいますか?」*2(玄関先等に子ども用の自転車があり、子どもがいることを確認しておくこと)

 

「新聞を読んでいる方と新聞を読んでいない方の平均年収の差ってご存知ですか?」

⇒「実は新聞を読んでいない方の4割が年収300万円未満なんですね。反対に新聞を読んでいる方は、日経新聞ー864万円、朝日新聞ー714万円、読売新聞ー667万円、毎日新聞ー626万円なので、比較しちゃうと300万円は差があるんですね。お金がないから読まないんじゃなくて、新聞を読むと年収も上がっていくんじゃないかなって思うんです」*3(普通の勧誘員が言わなさそうなことを言うという奇抜な策)

 

うーん、新聞を読まない損失がメインになってしまった。

ちょっと魅力を書こう。ここからはデータはなく、ぼくの主観だ。

 

「今週末、○○で△△っていうイベントがあるってご存知でしたか?」

⇒「私もそれに興味があったわけじゃないんですけど、新聞に書いてあったんですよ。それで今週末は彼女と出掛けようと思ってて。新聞って思いがけない情報が手に入るんですよね」(新聞に載っているなるべく変なイベントのことを話す。たまに訳の分からないイベントが載っているのだ。朝日新聞の場合、テレビ欄のちょうど真裏、左隅。五反田で福島の郷土料理が振る舞われる、的な知らんがな情報とか、図書館で謎解き体験、とか茨城あたりの花畑が満開、みたいなニッチなイベント情報)

 

「今度、○○から××って商品が出たのはご存知ですか?」

⇒「私もそれに興味があったわけじゃないんですけど、新聞に書いてあったんですよ。それでスーパーで買ってみたんですけど、なかなかよかったので、試してみてください。新聞でこういう情報を得られるってあんまり思ってもみなかったんですけど、そういう便利さもあるんですよね」(経済面の左肩に謎に新商品の説明が載せられていることがあって7日の朝刊を見ると明治の「71%がカカオの濃厚チョコ」や味の素の「酵素の力でお肉がやわらかくなる調味料」や「こども向けのスポーツシューズ瞬足の新モデル」や花王の「抗菌力を高めたアタックネオ」が載っていた。そういうようなやつのことだ)

 

利点というのがこんなものでいいのか、という気もするが勧誘に来ていきなり政治の話をするよりもやはり生活に密着した情報がより得られることを売りにした方が、勧誘という観点からは良いように思う。

 

すでに新聞を取っている人だともう一紙どうですか、っていう話になるが、その場合どうしたものか。

「別の意見を知ることって自分の意見をより深くすると思うんですけど、たとえば朝日さんでは~~という意見だったのが、読売だとどういう意見が掲載されていたかご存知ですか?」というような。もうこうなると新聞の営業というより新聞オタクだな・・・。

でも、誰よりも新聞を知らないと新聞は売れないと思うので、たまに記者の方が営業マンをしてみるのが最も新聞の購読を普及させるんじゃないだろうか。

 

以上、ぱっと思いつく新聞営業マニュアルでした。

役に立つかわからないけど、今の「勧誘」でしかない新聞販売が「営業」になることを祈っています。

なので、営業マンらしく服装はきっちりと、自信満々に話すことも忘れずにやってほしい。それは、どんな仕事でも言えるのだろうけど(自戒)。

*1:公益財団法人 新聞通信調査会「第5回
メディアに関する全国世論調査
(2012年) 」http://www.chosakai.gr.jp/notification/pdf/report5.pdf

*2:日本新聞協会 広告委員会「2013年全国メディア接触・評価調査」http://www.pressnet.or.jp/adarc/data/research/pdf/2013media/r10.pdf

*3:「アメーバニュース」http://news.ameba.jp/20140916-86/「データえっせい」http://tmaita77.blogspot.jp/2015/01/blog-post_14.html