SuchmosのF.C.L.S.LIVE@日比谷野外音楽堂を観に行った。
その音楽のかっこよさから、一度ライブに行きたい、と騒いでいたら、やっとチケットが当たったのです。野音。あのアーバンな音が日比谷に鳴り響くなんて!と喜び勇んで馳せ参じました。
で。
前からちょっと疑ってたんです。ニュースゼロに取り上げられたライブのMCを見た時から。
表紙を飾ったAERAの7月3日号におけるインタビューの記事でも、
認知度を高めた「Stay Tune」の印象から「シティポップ」のカテゴリーで語られることもあるが、「ロックは生き方」とYONCEは言う、そして、自分たちの核は「反骨」だ、と。
自分たちは「ミュージシャン」ではなく「バンドマン」だ、と6人は言う。
その違いは?と聞くと、「ここがあるかどうか」と、胸を叩いた。
とか書いてあって…。
ぼくにとっては「ロックは生き方」ってみうらじゅんが言ってたイメージなので、そこはかとなく脱力してしまうセンテンスなのです。
胸を叩いて「ここがあるかどうか」ってのも、まるで、まるで、うーん、思いつかないけど、とにかく、あー、なんだろう!
disりたいわけじゃないんです。「こっぱずかしいこと言うなー」とは思っちゃったけど、ほら、普通の人ならこっぱずかしいことを、自分の生き方として表せられる素直さがかっこいい、的な、そういうあれだな、と。
実際、ライブのMCはそのまんまだったので、感動しました。
なんだったっけな、「なんて素晴らしい景色なんだろう、なんて素晴らしい時間なんだろう」とか「広い海へこぎ出そう」みたいなこと言ってたし、「家族、仲間、地元に感謝とリスペクトの気持ちを込めて歌」ったりしてた。「変わる勇気が欲しい」みたいなこともおっしゃってました。
主観が入ってるかもしれないけど、観客の皆さまもややついていけてない感じがあってね、そういうのがもうたまらん。好きです。
で、気付いた。
もしかすると、ボーカルのYONCEは岡村靖幸の再来なのかもしれない!ということに。
都会的でオシャレーで、独特のダンス踊るし、クサいこと言う。わーお、岡村ちゃんですね。
しかし! YONCE、いやSuchmosには岡村ちゃんにないローカルかつホモソーシャルな連帯感があるのだ!
岡村ちゃんは一人で踊り狂う人だったし、一人でお腹いっぱいになるカリスマ性があるが、Suchmosの楽しみ方はYONCEを愛でるだけではなく、地元で結成されたという彼らのホモソーシャルな連帯感をも楽しめるのである。
何の曲か忘れたけど、達成感溢れる熱演後、YONCEが一人一人とハイタッチ等々拳を交わしていったのだが、もうね、女子たちがキャイキャイ言うてた。そら、言うよ。スマートな男の子らが楽しそうにはしゃいでるんだもの。私たちはホモソーシャルを尊んでしまう、のです*1。
そうそう。
Suchmosのファン層ってどんなのかなー、というのも気になってた。40代、50代が懐かしい音だ、と支持してるなんて話を聞いたので。
確かに、そのような年齢と思しき人もちらほら見ました。
が、圧倒的に女子、が多かったのではないだろうか。やっぱりSuchmosの醸すホモソーシャル濃度の高さを楽しめているのは女性なのであろう。
にしても、その彼女らのダンスがどこか盆踊りチックだったのが印象的だった。パラパラじゃないけど、割と手を動かすというのか、なんていうのか。エグザイルのライブとかもノリノリの曲あると思うのですが、同じような感じなんだろうか。初めて見るノリだったので、何かSuchmos独自のルールなのかと思ってしまった。
それからそれから。グッズが基本的にロゴをどかーんと映し出したものばかりだったのも印象的だった。あのロゴ、かっこいいんです。コカ・コーラ感がおしゃれで。でも、それがTシャツになると、コカ・コーラの全員に当たるTシャツみたいな感じがするような気がしないでもないような、えーと、かっこいいんです。
ぼくの勝手な思い込みではあるが、アンコールの時ってそのグッズを身につけて出てきたりすると思っていたのだけれど、誰も身につけてないどころか、YONCEにいたってはリバプールのシャツ着てたので、本人らは気に入ってないのでは、なんてことを思った。
そういえば、SNOOZEはすごく盛り上がったのに、その後に演奏したStay tuneは、あんまり気乗りしてる感じがなかった。そういうところに反骨精神、というかニワカは許さん、みたいな強気の姿勢が見え隠れするような気がしないでもない。
最後に。キーボード(TAIHEI)とギター(TAIKING)がめちゃ良い仕事してた。彼らの音が魅力の要なんだな、とつくづく思いました。特にキーボードの奏でる音にぼくは踊らされているなあ、と思いました。
これからもライブ頑張ってほしいけど、いつか、ブルーノートとかビルボードライブ的な、しっとりしたライブをするようになったら、また行きたいと思う。
錆びた弦で良い
破けたジーンズで良い
孤独な夜があっていい
何も無くても 笑えていればいい
何も無くても 歩けさえすればいい
この感覚をより突き詰めていって欲しく思うのです。
以下、参考。
・やたらかっこいいホームページ。
earphonefuzzyclub.hatenablog.com
・「彼らの(彼らの周りの)ブランド戦略である「若者/次世代の旗手」というパブリックイメージが、実際のマーケティング、客層と乖離しているような気がして仕方なりません」←このズレはあると思う。本人らは感じているのかなあ。そういえば、開演前になっている音楽がジャミロクワイとか、ビートルズのCome togetherとかで、おっさんほいほい感がすごかった。
*1:ホモソーシャルとは、いわゆる「男の友情」のこと。男性は男性間の友情を最も重要視する社会階層を築いている。会社然り、学校然り。男の友情、結束を高めるために「良い女」が必要になるのだ。反対に、男の友情を揺るがすのが、ゲイの存在である。余談になるが、テレビドラマ「あなたのことはそれほど」で、ゲイであることを結果としてカミングアウトしてしまった山崎育三郎演じる小田原さんが、その後も東出昌大演じる渡辺と良好な関係を続けられている描写があったのは素敵だった。彼らはホモソーシャルで結ばれていたのではないことを示していると感じられたから。一方、SuchmosがStay tuneという曲で、ガールハントが歌うのは、ホモソーシャルな関係であるから、当然のことなのである。