4月はたくさん美術館に行きました。
国立新美術館のルーブル美術館展、マグリット展、サントリー美術館の若冲と蕪村展、根津美術館の燕子花と紅白梅図展、東京藝大大学美術館のダブル・インパクト展。
一つずつ感想。
フェルメール一点突破、あとはルーブルって言っときゃ人が集まるやろ!みたいなところもあってやや物足りなさがあるものの、風俗画という視点から大御所オンパレード。
ティツィァーノ、レンブラント、ルーベンス、シャルダン、ドラクロワ、ミレー!
(↑川平慈英っぽく読んでいただきたい)
しかししかし、そんなゆーめいな名前を羅列しつつもそれぞれ一作品ずつ、しかも小品しかない。
ちょっとどーなんだ。
観た後六本木にあるおしゃれなフレンチを食べに行くのが主体の会ならそれでもいいのかもしれないけれど、なんて思う。
対してマグリット展のマグリット満載感たるや、充実の一言である。
初期から晩年まで、生涯を通じた仕事 worksを紹介してくれている。
戦時中と戦後の迷走というか、不可思議な転換については、正直言って知らなかった。
こういうのを知れるのは勉強になる。ターナー展でも同じような感想を持った記憶がある。
実はぱっと思い浮かぶマグリットとは晩年の作品である。
展覧会って前半じっくり見るけど、後半疲れちゃって流し見てしまう、みたいなのはあるあるだけれど、マグリット展ではぜひそのあたりの体力の使い方を考えていただきたい。前半もおもしろいので、難しいところです。
僕は高校生の時シュルレアリスムにハマった口なので、懐かしさ、郷愁みたいなものを感じつつ、その「へんてこ」な世界にひたひた浸った。
2時間弱かけて姫路市立美術館に行ったシュルレアリスム展で見た作品もあって、ほんとそのまま懐かしい。
わざわざ宇都宮美術館まで見に行った「大家族」、不気味な静けさがぞくぞくする「光の帝国Ⅱ」、山高帽の男の背中にボッティチェリの貼り付いた「レディ・メイドの花束」、木が前にあるのか後ろにあるのかよくわからなくなる「白紙委任状」、おじさんがたくさん浮いてる「ゴルコンダ」、パッと思い出してこれだけあったのだから強烈だ。
タイトルのかっこよさ。レディ・メイドの花束、キリンジの曲っぽい(イカロスの末裔、的な)。
ぜひ、エキサイティングな鑑賞を体験していただきたい。個人的なマグリットへの思い入れもあってオススメ度高し。
さてさて。
美術展にも流行りがある。
昨年はジャポニスム展やチューリヒ美術館展などなど、何かと印象派を観る機会が多かった一年のように思うのだけれど、今年は琳派を観る機会が多い一年になりそうだ*1。
- 燕子花と紅白梅図
根津美術館の燕子花と紅白梅図展は熱海のMOA美術館でも同様の(ちょっと違うけど)展覧会があった上での、それなのである。
すでに終わったものの畠山美術館においても琳派にスポットを当てた展覧会があり、これはどちらかといえば尾形乾山が主流であったもののやはり琳派の年だと感じさせられた。
琳派は観ていて、気持ちが豊かになるのでオススメである。
持てる技術を余すことなく、あからさまなほどお金のかかってそうな金箔まみれの素地に、絢爛な題材で表現する。
この贅沢の極みを1000円くらいで堪能できるのだから現代って素晴らしい。安すぎる。
紅白梅図。かっこよすぎる。息を飲む。なんていうのか、どーん!でばーん!ぐわっ!という感じです。
燕子花も、スマートフォンの画面で見てもそのデザイン性の高さがひしひしと感じられることと思うけれど、目の前に提示されると物質としての質量に感じ入るものがある。
あ、描かれたものなんやな、というごくごく単純な感想が浮かぶ。
画面上で見ているとどうしてもCtrl+C、Ctrl+V感が漂うのですが、やはりそんなものではなかった(当たり前だ)。
日本橋高島屋で5月11日まで「細見美術館 琳派のきらめき」展を行っているらしい。調べてたら見つけた。ブログやっててよかった。ぜひ行かねば。
光琳や宗達メインの展示が多い中、抱一や雪佳も取り上げるらしい。見なければ。
琳派にどハマりな2015年だ。
根津美術館、表参道という立地もおもしろい。オススメである。
- 若冲と蕪村展
なぜか記憶が曖昧なのだけれど、高校一年生が二年生の頃、京都のどっかで伊藤若冲の動植採絵が見られるというので、朝も早よからのこのこ出かけた。
財布には4000円しか入ってなかったことだけは明確に覚えていて、入場券と交通費で残り1000円ちょっと。図録が買えず、クリアファイルを買った。今ではボロボロのクリアファイル、フランス留学に持って行ったり、長年連れ添っている。
列が異様に長くて、1時間かそれくらい並んでやっと中に入ったと思ったら、中もめちゃくちゃ混んでいて、あまり内容は覚えていない。
並んでる途中、暑さで死にそうになって水を買ったら残り200円あるかないかになって、お昼を食べられず疲労困憊で帰宅した、なんて細かいことは覚えているのだけれど。
あれはどこのなんの展示だったのか、調べてみても、どこか記憶がおぼろげで、はっきりこれだと思えないのである(2007年の相国寺っぽいけど、なぜか見覚えなく感じられる…)。
2000年代から今に至るまで若冲は人気だそうだ。若冲と銘打てば長蛇の列、なんて表現が散見されるくらい、若冲の人気は半端じゃない。
それだけこの作家に、時空を超えた魅力があるのだろう。
たぶん「見たことがない」「ここにしかない」感覚を揺さぶられるからではないか、と思う。
さて、サントリー美術館の若冲と蕪村展はぼくにとってたぶん10年ぶりくらいの若冲だった。
とはいえ、その10年前の記憶はないわけだし、たぶん展示品もすべて初見。
にしても雑誌やら図版で見知ったものばかり、若冲らしい作品の目白押し、楽しすぎる。
象やの鯨やの海老やの鶏やの竜やの茄子やの葡萄やの、何見ても若冲まさに。
もっとポストカードを揃えておいてほしかった。
それに抗する蕪村の鷹揚さ、自画賛の手に入れたくなる感、飾っときたい感は可愛らし過ぎる。
又平に逢うや御室のはなざかり
春の海ひねもすのたりのたりかな
俳句やってみたくなる。
六本木アートナイトの日に行ったら1300円が500円だった!得した!
ま、得したとはいえ、それよりもなによりも若冲と蕪村を見られた喜びの方が強いです。おすすすすめ。
- ダブル・インパクト展
さて最後。
そもそも東京藝大大学美術館ってどこにあるのかというと、上野である。
上野公園を通り抜け、通り抜けしたその先にある。
ダブル・インパクトとはなんぞや、というと、黒船から文明開化、日本は西洋文化を
一気に浴びて、追いつけ追い越せ、その文化を我が物としようとする。
これをウェスタン・インパクトと呼ぶとしたら、反対に海外ではジャポニスムに象徴されるような(しかしそれだけではない)日本からの衝撃を受けていた、と捉え、そのダブル・インパクトから、明治日本の芸術の振り返りを試みている意欲的な展覧会。
日本の芸術の揺れ動き、「なんじゃこりゃ!→自分にもできるはず!→自分にしかできないことってなんだろうか?」が示されていて、ラスト、日露戦争の勝利に至り、天皇中心の近代国家、大日本帝国へとつながるその様はドラマチックである。
構成が抜群なので飽きないところがさすが大学の美術館と思わされる。集めたものを無理くり繋ぎ合わすのではなく、つなぎ合わせたいストーリーに沿って作品を集めているかのような。
以上、感想でした。
にしても、最近の美術展のサイト、めっちゃ凝ってるし、スマートフォン対応が半端ない。
4月と限定すれば以上5つの展覧会に行きました。
充実した一ヶ月である。稽古総見も見たし。
5月、どんどん晴れてゆけ。夏場所も楽しみだ。
よいゴールデンウィークを。