Nu blog

いつも考えていること

詩「タクシードライバー」

おしゃべりな

タクシー運転手になってみたい

町の中心を走る川のことを

聞かれてもないのに話したい

上流の桜がちょっと有名で

夏の祭りも賑やかですよとか

あそこの洋食屋は百名店に

選ばれているとかいないとか

野球選手がよく来るそうですよとか

こないだ他のお客さんが言ってましたけど

あそこの本屋は有名なんだそうですよとか

向こうにある大学は

何十年前に駅伝で優勝したとか

話したい

ええ、ええ、自然も多いし

人も優しくて

雪も積らんですし

台風も直撃したことがなくて

地震がどうとかもあんまり聞かんような

住みやすいところですよとか言って

愛想良く相槌をくれる人や

迷惑そうな顔をする人

お客さんの反応によらず

こっちの都合で話したい

この道を行く時はこの話

あの場所へゆく時はあの話

なんて具合に

同じ話を繰り返したい

口が勝手に動いて話す

そんな運転手になりたい

物価がどうとか政治がどうみたいな

ことは言わない運転手

なんて思いながら

今日も満員電車に揺られ

愛想の悪い事務員をやる

無駄話しない事務員をやる