Nu blog

いつも考えていること

日記

『PLAN75』を見た。

確かになーと思ったのは以下。

・自ら死ぬことを選べる制度、PLAN75の利用にあたっての細かい設定で、支度金が用意されることや、至れり尽くせりなリゾートプランがあること、反対にお金のかからない集合プランがあることなどはいかにもありそうなことだと思った。

・それまで介護に従事していた外国人労働者が、遺体の処理の仕事に斡旋されること。この制度ができたら、介護業界は利用数が減るので、労働力がそちらへ移動されるのは自然な流れに思えた。

 

ちょっとなーと思ったのは以下の点。

・PLAN75という制度の細かい設定でいくつか疑問。

①「住民票がなくても申し込める」という表記。あれはたぶん、申込会場において何も持っていなくても申し込めることを言いたいだけだと思うのだが、「住民票」と言ってしまうと、例えば外国人も申し込めて、そのまま制度を利用できるかのように思える。他国の人間にあの制度を利用させるのはあまりにもリスクが高い。申込の段階では特段の確認を必要としないが、後日住民票記載の住所へ別途確認書類を送付するスキームがあるように思うので、「本人確認書類(免許証やマイナンバーカード)をお持ちでなくても申し込めます」が正確ではないか。

②集合プランの設定。

これは語られていない点が多いので、推測も多いが、まずバスで施設に向かうことへの違和感。あのバス内で「やっぱり死にたくない!」などと騒ぐ人が出たらどうするのか。他の利用者にも動揺がうつり、多分そのバスはポシャる。私なら一人一人にお迎えをよこして恭しく施設へ運搬する。その方が有無も言わせないで済む。

ただ、大量のタクシードライバーに施設の場所が公開される、という点に難がある。そう、施設の場所。これは非公開にすべきだろう。

まさか車で個人が乗りつけられるのはおかしい。あの程度の情報管理なら、周辺にデモ隊がいてもおかしくない。かつての経産省前のように、ピケが張られてもおかしくない。それほど重大な棄民政策だ。

ましてや施設内にほいほい入れることの意味は全く理解できなかった。物語の都合のためとはいえ、ありえない。

そして、投薬の描写。どの段階で死に至るのか? 利用者への説明なく、シームレスに死へ至るのはおかしい。どこまでなら引き返せて、どこからなら引き返せないのか。説明のない薬物投与は安楽死ではなく、殺人であろう。実際の運用に当たって、この投薬部分は福祉ではなく、医療行為の一環に位置づけざるを得ない以上、もう少し丁寧な設定が必要だと感じた。また、マスクをつけられてもしばらく生きていた主人公とすぐに亡くなったおじさんと差があって、一体何をしている描写なのか理解できなかった。

そして、金品の持ち込みについてはさすがに一定縛りをつけるべきかと思う。あそこまで金品を持ち込まれた場合、銃火器の持ち込みもあり得るのではないか。施設に潜り込んで無差別殺人を起こす輩が出てきてもおかしくない。

③磯村くんが忙しすぎる。てっきり単なる窓口職員だと思っていたのだが、遅くまで残業して、業者との調整までやっていた。よほど小さな役所ならともかく、割合大きな都市圏のように思われるので、そんなに複数の異なる役割をあてがわれるのは酷ではないか。私のイメージでは、一般的に窓口はいわゆる非正規職員が事務的に対応し(劇中でいえば、電話の対応をしていた人のような形態)、磯村くんは日々の集計や、対象者リストの作成、そしてPLAN75という施策の取り回しを担当すべきで、よもや夜中の炊き出しの横で寒空の下受付をするのはちょっと激務すぎないか。

 

うーん、なんか他にも色々考えたのだけど、忘れてきた。

75歳以上の医療費負担が増えるなど(所得によるけれど)、着実にPLAN75に近いものが進んでいる現実の中で、リリカルな描き方に終始した点が私としては不満だった。

いとうあさこ主演の『鈴木さん』という映画でも、45歳以上の未婚者を対象に市民権剥奪、兵役への誘導みたいな棄民政策が描かれていたが、こちらもまた、政策の粗が作品のテンポそのものを悪くしていた。

SFの肝は「少し不思議」という程度のリアリティと非現実感だと思うので、映画監督の肌感覚的危機感を直接投影しちゃうと、「すごく不思議」な世界に突入しちゃうように思う。

施策や制度、そして運用と行政職員の役割など、細かいことは、この世にたくさんいる元官僚に脚本チェックしてもらって、本当にあってもおかしくない怖さを作り上げてほしかった。

 

はらだ有彩にハマった。タイトルも装丁も完璧な『ダメじゃないんじゃないんじゃない』が刺さりまくって、『日本のヤバい女の子』『同 静かなる抵抗』『女ともだち』と立て続けに読んだ。

肯定的な眼差し。軽いようで、真面目な語り口。読んでいる間だけでも、優しい気持ちになれる気がする。

なんらかの表彰状が、はらださんに与えられていないのか、と思う。

 

森七菜の『アルバム』がすごくよい。「君の彼女」の間奏なの疾走するJ-POP感。あふれる青春。「愛のしるし」のカバーも最高。かわいい「Lovelog」もいい。

ああ、どれも、ブックオフで、恋愛漫画読みながら、聴いてたい!!!!

広末涼子の再現のようなきらめきだと、僕は思うのだけど。

 

「うーん、なぜかわからないが、お目当ての人の現代詩文庫がありそうな気がする」という意味不明な直感で古本屋に行ったら、ドンピシャ。あった。すごく嬉しかった。呼ばれてたなと思った。