Nu blog

いつも考えていること

詩「平米の算段」

一平米増やすためにいくら払えばいいのか計算して嘆いている まだ明日は来ないからあと何回か検算できる

 

朝早く来て 昼食も取らず 夜まで働くと 体がパサパサになるし 眉間のあたりがモワモワするので 相当労働に向いていない


君の靴が散乱し 僕の本が積まれ 君の服がその上に置かれ 僕のスーツをその上に置く ミルフィー


膝を曲げて浴槽に収まる時 いつもポキッと破裂音が鳴り 痛みを感じる ようやく寝る時 ベッドからはみ出した足が冷たく 硬く 紫色になる


だから あと一平米 もう一平米 欲しくてそれがいくらになるか計算して ため息


築年数 駅徒歩分数 階数 東西南北 オートロックかどうかは構わない と思っているのは僕だけ


無駄なことしたくないよね と僕も言ったことがあるし 誰かが言っているのを聞いたこともある でもこの音楽聴くのが無駄になるかどうかは聴くまでわからないし このテレビ見てるのが無駄になるかどうかもわからない そうだね 本読むのも同じ


本読むのも同じ いつも開く前に何が書かれているか知らないことに驚く 知らないメロディが 聞いたことのないニュースが 僕を迎え入れて 少しそっとしておいてくれる


あと一平米あれば 本読めるのに ないから 読めない


あともう少し築年数が若ければ あともう少し駅徒歩分数短ければ あともう少し階数が上ならば あと一平米多ければ


ここに僕はいないのに 今ここにいるから あと一平米足りないまま 朝を迎える