○あなた
起居を共にし
時に口づけを交わし
性器を重ね合わせる
あなたと
寄り添うと
笑った時の肩の揺れを感じる
TVを見ている
あなたの
どんなところで
お昼を食べているの?
電話を取った時の
メモ帳は裏紙?
玄関の扉開けたら
そんな質問忘れてしまうけど
いつも私が先に寝るから
あなたのおやすみなさいはひとりごと
いつも私が先に起きるから
私が鳴らした背骨の音を
あなたは聞けない
細胞は入れ替わり
写真に残るあなたと私は
いまや別人
無数の分岐点と
選ばれなかった選択肢を
忘れない
あなた
あなたという現象と
私
私という現象が
時間を編み出す
日々の
ゆらゆら
わからないことも
ある
いること
それだけを
信じます
あなたが
○不眠症
不眠症だったこの国が
ようやく眠りについた
坂道を転げるように
眠りに落ちた
\
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長い入眠時間の果てに
ようやく君は眠りについた
鼻から漏れる寝息
歯ぎしりの音
苦しそうな表情を浮かべる君
タオルケットだけで
寒くないか
枕の高さは合っているのか
今朝の夜明けを最後に
この世界にもう夜明けは来ないかもしれない
君が目覚めることもなく
僕たちは二度と出会わない
最後に交わした言葉は
なんだったのだろうか
ありがとうやおやすみ あるいはさようならなどではなく
呪いの言葉のようだった
もし目覚める時が来たならば
その時はおはようと言ってよ
できるかぎり晴れやかな顔で
互いに抱擁し会おうよ
仲違いをしたわけじゃない
少し忘れてしまっただけだ
日々の営みを支えてくれた
かけがえのなさを
よく眠り
いづれ起きよう
君の頭の靄が晴れ
新しく何か始められるかもしれない