田上孝一『99%のためのマルクス入門』と斎藤幸平『「人新世」の資本論』を読んで、マルクス漬けである。
どちらも同じようなことを言っている。環境変化によって地球が終わりかけている。資本主義を保ったままでどうにかできるわけないのだから、社会主義を導入しよう、ということ。
大雑把なまとめで納得感がないだろうけど、読んでいただければ、非常に納得する論理展開で、読んだ人たちは著者らの意見に大いに賛同するだろう。豊かさの定義を変えることなど、魅力的なことがたくさん書いてある。
しかし、読まない人にとっては?
本を読まない人にとって、この考えは「ない」のである。たとえテレビや新聞、雑誌に斎藤氏がインタビューを受けまくっても変わらない。
ないものをどうにもできない。どれだけマルクスを通じて新しい想像力を喚起しようとしてもその試みが届かない。ちなみに『「人新世」の資本論』は8月末に32万部。すごい数字なのだが、果たしてあなたの周りでこの本を読んだ人はいるのだろうか?
この本を読み、賛同し、立ち上がる人が社会の3.5%まで増えることを願う(3.5%の人が立ち上がれば社会は変わる、らしい)。願うのだが、有限な地球環境をどのように使うのか、私たち人間はいつも想像以上に利己的で、いなごのように全てを食い荒らし、食うものがなくなり絶滅するまで、尽きることがない。未来を民主主義の頭数に入れるようなプリセットが必要なのだけれど、人間自身がそれをやり遂げられるだろうか。悲観的だが、私はそれを無理だと思う。すでに、引き返せないところに私たちはいるように思う。
であるから、この非倫理的な生活を続けるのか。個人として悩むところは大いにある。
ノアの方舟なき大洪水が、少し先で私たちを待ち構えている。穏やかに死にたい人は今が死ぬにはもってこい、などと皮肉を言う。
(その後、鶴見済の『脱資本主義宣言』を読んだ。2012年に同じことを言ってたんだなあと感心した)。