朝目が覚めた時にいきなりそのネットゲームのことを思い出した。
そのゲームは架空の村の住民になって、部屋を構え、交流するのが主目的のまったりとしたゲームで、交流することで架空のお金を貯めて、そのお金で家具や服を購入するのが醍醐味なのだった。
初めにあてがわれるのはマンションの一室なのだが、たくさんお金を貯めると、一軒家を構えることができる。
どうやってお金を貯めるのかは忘れた。じゃんけんで勝てば増える、みたいなゲームがあったように思う。
クリックして、地図から地図を移動し、他人の住宅やお店、神社や湖などに移動できるようになっていた。移動先に隠しアイテムがあったりした記憶もある。
夢里村というそのゲームについて、大人になってから誰とも話したことがない。
小学四年生くらいの一年間ハマっただけのそのゲームのことが、不意に思い出されたことが不思議でならない。私の脳みそはどういうメカニズムで記憶を保持したり、取り出したりするのだろうか。大切なことは忘れて思い出せないくせに、こんな些細なことを思い出させるなんて、どうかしている。
ネット上のどこにももう、跡形もなくなっている。当時の、あの村はマコンドのように消えてしまった。
同じ作者がアプリ版夢里村をリリースしていたが、操作性も雰囲気も全然違っているうえに、ひとの気配がなく、寂れていた。15分程度いじって、悲しくなって止めた。
スーパー正男というネットゲームもやっていた。
スーパー正男はマリオのパクリで、でも色んな人が新しくステージを作り出せるのが売りで、みんな面白い作品を作る人のホームページにリンクを貼っていた。
数珠繋ぎのように面白いステージを遊びまくった。めちゃくちゃ難しいやつとか、クリア不可能なやつとか、右にまっすぐ進んでいたら勝手に敵を踏んだりしながらゴールまで運んでいってくれるやつとか、いろんなものがあった。
それと同じ作者が作った「サバンナ・プロジェクト」というゲームも好きだった。
何もない初期画面に、適当に草食動物と肉食動物と草を配置して、どれだけの期間、食物連鎖を保てるかを試すゲームだった。
初期配置が全てなので、たとえば草を生やさず動物だけ配置しても、まず草食動物が飢えて消え去り、続けて肉食動物もいなくなって、すぐに絶滅してしまう。
うまいこと配置すると、草食動物は草を食いながら、ぽこぽこ子を産んで、肉食動物がそれをいい具合に捕食し、草は草食動物に食べ尽くされないよう繁殖を続ける。
とはいえ、未来永劫そういうわけにはいかず、しばらくしたら草か草食動物か肉食動物か、とわれかが尽きて、絶滅してしまう。ありゃなんだったんだろうか。
そんな色々なインターネットゲームを一人でニヤニヤ笑いながらやっていた時期があった。ものすごく暇だったし、かといってゲームを買ったりする金もなく、本も読み飽きた冬の日のことを象徴的に思い出す。
自分以外のみんな嫌いで、そして自分のことが一番嫌いだったあの日。