Nu blog

いつも考えていること

ミツメ『Ⅵ』

この一ヶ月、ミツメばかり聴いていた。3月24日、2年ぶりに発売されたアルバム『Ⅵ』だ。

実を言うとミツメの歌詞を、文字としてちゃんと読んだ記憶がない。たまに何を言ってるか気になって、読みはするのだが、すぐ忘れる。

でも、歌える。何度も聴いて、歌詞を、音として覚えてしまうからだ。

だから、不意に言葉の意味に気づいて、不穏な歌であることに驚く。

たとえば4曲目の「ダンス」。「どこにいるの、神様。今私にできることは」「走る体もつれて、踊るように手を伸ばせば」という何か切実な言葉がきれぎれに現れて消える。そしてかき鳴らされるギターの歪んだ音。何があった?

しかし、この曲を聴いていると、ホッとする気持ちも湧く。たぶん、意味深な歌詞ではなくて、暇で「何したらいいんだろう」と悩んだり、歩き出したら転けてしまっただけだからかもしれない。そう捉えると相当なおとぼけソングだが、盛大な誤解かもしれぬ。

軽快なリズムの『リピート』もおもしろい。「気の向くままに足を鳴らせば、繰り返すリズム」「寄せては返す心の波に耳を澄ませて泳ぎ出す」…、こうやって書き出してみると初期のキリンジみたいな雰囲気。だから、深読みもできそうなのだが、しなくてもいいように思う。そのまま受け止める。気の向くままに足を鳴らして繰り返すリズム、心の波には耳を澄ませて泳ぎ出すような夜…。

先行してシングルカットされた『トニック・ラブ』は繰り返し響くシンセっぽい音が心地よい。どうやらカクテルっぽい何かを表してそうな歌詞だが、あんまり興味がない。音の方が大切だ。夜の街で、大声で歌いながら踊りたい。

 

CD版に収録されているボーナストラック『Basic』はSTUTSとの共作。こちらも『ダンス』と同じように「手を伸ば」す歌なのだが、届かない。まあ、そんなことはどうでもよい。STUTSの紡ぐリズムはまるで、晴れた日に、やることもなく散歩してたら見かけた、知らん人の家の軒先にある花壇を眺めている時のような気分にさせてくれる。それが重要だ。

 

たぶん断片的に聞こえる歌詞としては、時は戻らないねえ、というようなことが共通して歌われているような感じを受ける。

まあ、そりゃそうだ。

でも言われるまで案外気づかないことでもある。

 

とにかく、必聴。