Nu blog

いつも考えていること

スケッチ(就職)

目的もなく大学に進学してしまったぼくは、周囲が就職活動を始めて、しかも売り手市場だからとポンポン内定をもらっているのを横目で見ていると、さすがに焦りが出はじめたので、就活サイトに登録したり、大学の就職課がやっている面接対策セミナーを受けたり、自己分析というやつで志望する業界や職種を見つけようとしてみたり、いろいろやりはじめた。

サイトに登録して適当に履歴書を出したり、面接セミナーで実演したり、実際の面接で有る事無い事話すのは割と気楽にできたのだが、この自己分析というのが恐ろしく気が重く、どれだけやっても何も出てこないのだった。

結局売り手市場の波に乗って、深く考えもせず受けた会社に受かってしまい、とうとうぼくは、何も考えずに就職までできることになった。こういう人間も社会にたくさんいるんだろうか、と自己分析の本をゴミに出しながら思った。みんながみんな、やりたいことをできるわけでもないし、やりたいことはないながらも労働によって社会に参画できるぼくは、恵まれている上に驚くほど不幸じゃないかもしれないとポジティブに思った。

友人の中には、第一志望じゃないとか、そういうことで悩んでいる奴もいたが、そもそも自己分析で志望順位をつけちゃったからそういう悩みが起きるわけで、順位をつけなければそうは悩まなかったのではないか、とか思ってしまう。

そうやって働きはじめた矢先に新型コロナウイルスがどうのこうのということで、本来は研修所で受けるはずだった研修がオンラインになり、ぼくは家でPCの画面に向かう毎日になった。

夏前に本配属され、今は先輩について得意先を回る日々である。卒業が一年遅れていたら、きっと就職できなかったに違いない、とぼくは思った。

 

目的もなく大学に進学してしまったぼくは、オンラインでの卒論指導を受けた後に、気乗りしないまま就活サイトを眺めたり、自己分析がどうしたこうしたというサイトを見てひりつくような気持ちになったりした。さすがに今年は就職が厳しい。オンラインのおかげで受けやすくはなったが、受かりやすくはなっていない。採用を取りやめた企業を受けるはずだった優秀な奴が流れて、しわ寄せはぼくみたいなダメなやつのところにくる。

このままどこにも受からず、派遣かバイトか、留年か進学か、そろそろ腹をくくらないと。親にいつ言おうか。年末年始も帰ってくるなと言われてしまった。報告するタイミングがない。地元に戻ることもできないのか。ぼくはどうしたらいいのか。

 

目的もなく大学に進学してしまったぼくは、その地震から三週間後、入社式のために東京へ来た。電気のついていない地下道を歩いた。頻繁に余震があって、めまいがすると電話で話している女の人がいた。

今年の就職活動は、どの企業も軒並み延期になっていると聞く。地方の学生にとって、東京まで最終面接を受けにくるのは大変なことだ。ましてやこの状況では。さらに、就職率も下がるだろう。リーマンショックから持ち直してきたと思っていた矢先。今年が就活だったら、ぼくもどうなっていたかわからない。友人はベンチャー企業に行かなきゃダメだぜとか行って、全然知らない携帯電話のゲームアプリを作る会社に行った。

これから始まる会社員人生が、どうなるのかぼくは不安でたまらなかった。社会も変わるし、会社も変わるし、ぼくも変わるし、何一つ確定的なことはなかった。