Nu blog

いつも考えていること

スケッチ(勧誘)

ぼけーっとしてるからか、よく道を聞かれる。外国人に道を聞かれると説明が難しいから、結局「let's come together」というビートルズみたいなことを言って先頭に立って案内することになる。都営三田線大手町から八重洲口の大丸まで歩いたときは、その間の持たなさに冷や汗が出っ放しだった。15分も黙って着いてきてくれたあの外国人の家族は偉い。

ちゃんと目的地に行きたがる人を案内するのは問題ないが、胡散臭い人も少なくない。

「このあたり飲み屋ないですか?」と聞いてくるのに、途中から「この辺りの方ですか?」とか関係ないことを言い出す。噂によると、人によってはその後「LINE交換しませんか?」となって、ネットワークビジネスの勧誘を受ける、らしい。

なぜか私はLINE交換の申し出までは受けたことがなく、いつも途中からの関係ない話で終わってしまう。結局私の心に「あいつら飲み屋探してないやん」というモヤモヤが残るだけである。

 

「この辺りの飲み屋知りませんか?」

「このあたりつったら、そこらへんの商業ビルに入ればいくらでもあるでしょうに」

「へー、そうなんですね! お詳しいですね!」

「お詳しいって、まだ何も教えちゃないじゃない。なんなの、どんなとこ行きたいの?」

「特にどういうのってのはないんですけど…」

「そんなことで良い飲み屋が探せるかな。ちょっと気合が足んないんじゃないの? ほれ、小綺麗なレストランがいいなとか、反対に小汚い焼き鳥屋でホッピーぐびぐびいきたいね、とかさ、なんかねぇの?」

「お兄さんのおすすめのところならどこでもいいンですよ」

「そう言われたら逆に教えられないね。オススメの店は教えないことにしてるから」

「なんでですかい」

「簡単に教えて口コミで広がっちゃって、混雑されたら困るからね。絶対に教えない」

「お兄さん、おもしろいですね。ご出身はどこなんですか」

「なんで出身を教えないといけないのか」

「いや、とてもおもしろいので、関西の方かと」

「なんだ、それ。関西の人間は全員面白おかしいアホばっかりで、関東の人間は四角四面の馬鹿ばっかってことか。そんで本州以外は人にあらずか。とんだ差別主義者だな」 

「そんなこと、一つも言ってない」 

 「おいくつですか」

「初対面の人間に年齢聞いて何を推し量るつもりなのか、絶対に教えない」

「ここらへんで働いてらっしゃるんですか」

「職場に来られたら困るから教えない」

「そりゃそうですよね」

「なんなの、君は。居酒屋が知りたいのか俺の出身地が知りたいのかはっきりしてくれ」

「わかりました、私はネットワークビジネスの勧誘をしているんです。こうやって話しかけて、徐々に勧誘していくんです」

「いきなしのカミングアウト」

「あなたを勧誘したって絶対何も買ってくれないでしょうから、もういいんです」

「それもそうかもしれん。何売ってるの?」

「電化製品とか生活用品とか、まあいろいろです。家にたくさんあるんですよ。参ったもんです」

「世話ないなあ。誰に誘われてそんなこと始めちゃったの」

「先に上京していた親友から声かけられて始めました」

「そりゃつらいな。ちゃんとした友達ってのは商売ごとに親友は巻き込まないぜ。親友には背筋(せ、す、し)があるって昔っから言うんだよ。だから商売ごとには「さそ」はない(誘わない)」

終わり

(途中で飽きちゃった・・・)