Nu blog

いつも考えていること

私刑を喜ぶ社会

半沢直樹の最終回を観た。前々から終盤15分くらいは観てたりしたので、話の流れはわかっていた。要は「スカッとジャパン」でしょ?

最終回もそのまんまスカッとジャパンで*1、悪い奴がみんなの前でその悪事をバラされて土下座して逃げる→あー、スッキリした、ってことのようで。

横で普通に観てる妻に悪いが、思わず「こんな人民裁判見てられない、胸糞悪い、最低だ、嫌悪感しか抱かない、ポル・ポトより酷い」と強い口調で罵ってしまった。

たとえ本当に悪事をしていたとしても、銀行員の半沢氏にその人を裁く権利はないはずで、そればかりか「国民に対して」などと国民を代表したようなロジックを振りかざした上に、背後に控えるマスコミを味方として恫喝するなど言語道断。私刑、リンチ以外のなにものでもない。これが現実に歓迎されるなら日本は法治国家ではないし、民主主義国家でもない。ドラマなんだからそんなこと気にせず楽しもうよ、というかもしれないが…(さすがに国税庁の情報リークみたいなありえない展開にはつっこまない)。

半沢歌舞伎などといわれ、勧善懲悪のドラマが展開される。こうして勧善懲悪が歓迎される世の中だから、自民党支持層と非支持層の溝は埋まらない。この世の中には悪人もいなければ善人もいない。そんなこともわからないのだろうか。

しまいには「どうして、『半沢直樹』を喜んで見る国民が、自由民主党に喜んで票を入れるんだろう???」と言う人まで現れる。

unemployed economics on Twitter: "どうして、『半沢直樹』を喜んで見る国民が、自由民主党に喜んで票を入れるんだろう???" 

当たり前だろ、としか言いようがない。半沢直樹による私刑を喜ぶんだから、首相による利益誘導なんて当然喜ぶだろうが。まるで自分は世の中を正しく見れていて、このドラマについても正しく楽しめるのだ、というような態度に全く驚く。

とにかく、私刑はいけません。私刑を喜ぶ社会は、魯迅の描いた、銃殺刑を薄ら笑いながら楽しむ社会よりも酷い。

 

かくも憤っていたら同僚に「スーパーサイヤ人が殴り合ってるのと同じなので、そんなこと気にしちゃいかんですよ」と言われた。たしかにスーパーサイヤ人が殴り合っているのを見て「暴力はいかん」などと言ったことはない。とても納得したから、もうなんも言わんこととする。

*1:月曜日に帰宅した時、何気なくスカッとジャパンがつけられていたらとにかく即座にチャンネルを変える。ムカつく奴を成敗して「スカッと」するなんて、なんて悪趣味な内容なんだろうと思う。