Nu blog

いつも考えていること

いろいろ

坂本裕二「スイッチ」

何がすごいのかわからないが、なぜか泣きそうになった。高校生時代の二人、よかった。

 

吾妻ひでお失踪日記」「失踪日記2 アル中病棟」

うっしっしと笑う配管工時代の先輩、柳井さんの顔が忘れられない。

アル中病棟での日々はほんとーに喜劇のようだが、それは描くための喜劇である。生きていくためには笑わなければならない。

 

斎藤貴男カルト資本主義

地方自治体も乗っかるEM菌、ソニーによる超能力、稲盛和夫の思想、ヤマギシ会、船井幸雄など。

大きめの企業やその子会社なんかで、人材育成系でこーいう系統のおっさんいるんだろーなあ、と思う。

あるいは最近流行のオンラインサロンとかも似てる。

 

山本貴光・吉川浩光「その悩み、エピクテトスならこう言うね。」

コントロールできる範囲とそれ以外に分けて考えようね、というお話。

この二人組は色々本を出しているようで、私はなぜか高校生の時にこのお二人が共訳したジョン・R・サールの「マインド 心の哲学」を読み、ちんぷんかんぷんで理解できなかった。読み直してみようか…。

 

四元康祐ゴールデンアワー

バカボン巨人の星ゲゲゲの鬼太郎、あるいはおらは死んじまっただ、といった60年代から70年代の万博や浅間騒乱などを題材にした第三詩集。

ゴシック体が詩集らしくないが、題材に合わせた選択だろう。

へーい、教えておくれよ、ぼくは

生き延びたんだろうかぼくのゴールデンアワー

彼らは首を振り繰り返すばかりだ

できるかぎりたの手は尽くした、あとはもう

本人のちから次第だと 

 

吉田精次「万引きがやめられない」

クレプトマニアの理解と治療に関する本。アルコールやその他と同じようにスリップがある。スイッチが入るそうだ。恐ろしいことだ。

一人で店に入らない。「できない」と思わず、「やる」のである。今日一日万引きしないを積み上げていく。恐ろしく長い、人生である。

 

露木恵美子・山口一郎「職場の現象学

場の研究。誰かから見た自分ばかりに囚われてないか、と問う姿勢が強い。大学のゼミでいろんな人と議論しながら読みたい一冊。

 

ケルアック「トリステッサ」 

硬質な文体。ビートニクは大学生の頃から何度も挑戦しつつ、挫折してる。でも痺れるよね。 

 

国立新美術館「古典×現代2020」

円空×棚田康司、仙厓義梵×菅木志雄、江戸時代の花鳥画×川内倫子葛飾北斎×しりあがり寿がよかった。円空の可愛らしさ、圧倒的実力を前に棚田氏の鋭さが刺さって、まるで決闘場のよう。仙崖の柔らかさにソリッドな菅木志雄も抜群にカッコいい。花鳥画を物ともせず、より生々しい写真、動画を見せつけた川内倫子。私は今回初めて知ったが、こんな凄い作品があるのかと震えた。しりあがり寿北斎とともに洒脱に遊んでいた。

帰りにウエスト青山ガーデンのオムレツとパンケーキを食す。めちゃくちゃ美味い。

 

crystal-z「sai no kawara」

さらりとしたヒップホップかと思いきや、医学部入試における年齢差別が裏テーマ。ゴールをずらされてたなんて、というような歌詞に引っかかりながら最後へ行くとニュースを読み上げる声、そして隠れて撮っていたであろう大学側とのやり取りの一部。真面目でらっしゃるからとか、不正ではないとか、断片的に聞こえるワードに作者の怒りがにじむ。30歳はやり直せない年齢ではない、はずだ。しかし、心の内側からは「もう30歳だからね」という声も聞こえる。社会になじんだ私である。内側の声を否定するのも私である。

 

PUNPEE「The Sofakingdom」

KREVAとの「夢追人」も「Operation: Doomsday Love」も最高。

 

柴田聡子「スロー・イン・ザ・ミッドナイト」

スロー・インを購入したらついてきた架空のラジオ番組。途中挟まれるアルペジオの美しいこと。

 

ITZY「DALLA DALLA」

妻が虹プロから横流れしてハマっているITZY。他の曲も悪くないけど、この曲だけ突出していいと思う。「みんなと私は違うんじゃ」と否定する強い態度。「So what」とか「I don’t care」とか、喧嘩腰すぎて笑っちゃう。踊ってる時も媚びた態度がないのは良い。

それに比べるとNiziUは「笑顔にしたい」とか「ヒミツなんてnothing」などと相手を軸にした内容の歌詞になっていて、JYPの日本向け戦略としてはそういう感じなのだろうか。他の曲もパーティチューンで、どうもしっくり来ない。もっと自立した自我を押し出した方が魅力的に思うのですが、そういうのは日本では売れないんですか。なんてこったい。ここでまで注目を集めたのだから、強いメッセージをぶっ放して日本の「幼き子を愛でる」アイドル文化を震撼させてほしかったなあ…。

 

絲山秋子「御社のチャラ男」 

タイトルに惹かれて。会社を一つの文化として捉えていて面白い。複数の視点が絡み合いながら語られる。ジェンダー感や日本文化感が顕著に表されてグッとくる。

 

新庄耕「地面師たち」

高輪ゲートウェイ近くの土地を使った詐欺事件。あと数分で本当の持ち主が帰ってくる!とハラハラさせる描写はわかっているのにひきこまれちゃう。

現時点までの新庄氏の作品はとりあえず全部読めた。狭小邸宅もスーパーカルマも地面師たちも構造的には似ていて、騙される側が師を得て騙す側に入り、そのカラクリを知って師を殺そうとする。構造が似ている分安心して取り上げるネタを楽しめる。

映像化しやすそうに書いているのに、なかなか映像化されませんね。だれか、してあげてください。

 

アーティゾン美術館

鴻池朋子ヴェネチアビエンナーレ日本館、コレクション。鴻池朋子の、各地で聞いたお話の下絵を渡して縫ってもらう作品が良かった。人々の記憶を再構築することで、よりリアリティを持って語りかけてくるようであった。「ツキノワ川を登る」 もなんだかグッときた。皮を背負って雪中を歩くのだが、それがなんとも、良かった。

 

そのほか雑感

少し前になるが、Twitterで男性を女性らしい見た目に変化させるアプリが流行ってるのがつらかった。

なぜ女性になる時、化粧を施され、髪が長くなるのか?

化粧も長髪も所与の産物ではない。後発的に社会性を伴って習得される技術である。あたかも化粧や長髪を女性の必修科目のように取り扱うこのアプリに大きな問題を感じた。

普段ジェンダーに対する問題意識の高い層が、男性アイドルやアスリート、歴史上の人物などの写真を加工し、楽しんでいたことに疑問を持った。肖像権の問題には詳しくないから踏み込まないが、少なくとも「女になったらこんなに"かわいい"or"ブサイク"」どちらにせよ、ジェンダーバイアスの固定化かつルッキズムへの収斂は免れ得ない。

むろん、男性がそれを活用し「女になった俺、ヤバい」などと意識せず楽しんでいるのも醜悪だった。

 

そしてそして、都知事選挙は予想された結果が予想されたとおりに現れた。残念だ。

にしても投票率が低い。棄権している人というのはどういう人なのだろう。もちろん、投票率が上がっても結果が変わるとは思わない。ほぼ、各候補者の票が二倍に積み上がるだけと思っているが。

選挙日当日、「投票しよう」「投票率をあげよう」の声が散見された。ツイッターでそのツイートを目にする人は、大抵すでに投票に行っている。投票に行かない人への呼びかけは、ツイッターではできないんじゃないか。たぶん、引っ張ってでも連れて行く的な、直接的な働きかけが必要だ。

まあ、そんなことしても、結果は変わらないのだけれどね。