夏が来た。
空を見てると、
旅情が動く。
「生活」とやらが……聞いてあきれる。
ーー中原中也「(夏が来た)」
荷物を運ぶ青年の
頭の帽子が跳ね揺れる
したたる汗が光ってる
アスファルトに落ちて焼ける
君が僕の布団に滑り込み
ミツバチの攻撃みたいに
とっても熱くなる
陽を受けて照る
溶けたアスファルトと犬の小便
目をつむったら出てきた生理的な涙
かわしたはずの嫌がらせで
家に帰って心が痛む
矜持を持てっていったって
ああ、ああ、ああ、ああ
限界があって
荷台を押して駆ける青年の
帽子の隙間から飛び出るポニーテールが
跳ねて左右に揺れ動く
車輪の鳴らす騒音と
セミの声が地に染みる
終点のないバスや電車?
ではなく
私たちは世界の中を歩いている
だけのため
自ずから終着はない
草原、一本道、青空
くっきりと
赤い気球が浮かんで見える
いま、このとき
気づく