Nu blog

いつも考えていること

スケッチ(不吉、不運)

靴がパカパカし出したので不思議に思っていたが、ぼくは呑気に青空が気持ちいいななんて思っていたので、あまり気にせず歩いていた。エスカレーターに乗って地下鉄のホームまで降りて、いよいよ靴が脱げそうになって初めて足元を見たら、靴紐が切れていた。

買い物から帰って部屋に上がってからしばらくして、やけに床が冷たく感じられた。しかも右足だけが冷たいからなんなんだろうと思ったら、靴下が破けていた。

 

月曜の朝、浮かない気持ちで天気予報を見て、朝飯を食い、髭を剃った。仕方がないと諦めて下着を取り出しにいったら、どれも首がだらんと伸びていた。最もマシなやつを着てワイシャツを見たら、とれも襟が薄汚れていた。スーツは股下にほころびができていたし、靴も汚れが目立ち始めていた。

 

鼻水が出たので、リビングのテーブルに置いておいたティッシュの箱から一枚抜くと、それが最後の一枚だった。面倒だなあと思いながらその箱を潰し、新しい箱を取り出した。晩飯中、口の周りを拭きたくてダイニングテーブルの上のティッシュを使うと、それもまた最後の一枚で空になった。ぼくはまたその箱を潰し、新しいティッシュを取り出した。寝る前に鼻をかもうとベッドサイドに置いたティッシュを取ったら、これもまた空になった。空になった箱の空っぽさよ。世界で一番軽いもののような気配さえある。

 

玄関を出て鍵を閉めて、道路に踏み出したその時、黒猫が目の前を横切った。猫のあまりいない町だったので、珍しいなと思った。その日は駅でも、お店でも角を曲がるたびに人とぶつかりそうになった。

 

天気予報では、午前中は雨だと言っていたから、ぼくは諦めて家を出た。雨だから午前中だけ休みます、そんな気ままな人生を送ってみたいものだと思った。ずいぶんと激しい雨で、革靴も濡れ、ズボンの裾も汚れてしまった。肩まで濡れて、電車の中も湿っぽく、濡れた傘が当たった、当たったないで一悶着起きていた。会社に着いて窓の外を見たら虹がかかっていた。雨が止んでいた。