Nu blog

いつも考えていること

2019年に観た美術展

2019年振り返り企画その二。

美術展について。

 

結局のところ、官展が一番質、量、迫力すべてにおいて他を凌駕したと言えるだろう。東京国立博物館の「美を紡ぐ 日本美術の名品」は圧倒的な展覧会であった。唐獅子図屏風、檜図屏風、納涼図屏風・・・。西洋の名品ばかりに目がいってしまう美術シーンであるが、このような技術と気迫の溢れる作品が日本にもたくさんあると知ることで、世界はまた別様に広がる。

今年も東京都美術館は大掛かりな展覧会をたくさん成功させた。ムンククリムト、コートールド。どれも目玉作品があり、訴求力があり、そして充実した鑑賞体験を与えてくれた。自分の足で見ようとしたら数十万円で済まない作品ばかり。いつも本当にありがとうございます、としか言いようがない。ハマスホイ展には大きな期待を寄せている。

東京ステーションギャラリーで見た岸田劉生展も良かった。辰野金吾展も忘れてはならない。

東京都現代美術館の再開は大きなニュースである。様々にリニューアルされていたのも注目だし、新しく所蔵された作品たちも大いに楽しかった。そして、ミナペルホネン・つづく展も話題となった。

東京国立近代美術館は福沢一郎展の記憶。今年はその一回くらいしか竹橋に行かなかった。充実した常設展を観に行かないとですね。

国立新美術館ではボルタンスキー展。広告の雰囲気で勝手にキャッチーな展示なのかと思っていたら、めっちゃ重い。というギャップを大変楽しんだ。ウィーン展の記憶が行ったはずなのにあんまりない・・・。 

森美術館六本木クロッシング展が良かった。六本木という土地の交差性を象徴的に感じさせつつ、様々な作家の魅力がプロモーションされていたように思う。話題となった塩田千春展、バスキア展もあった。特にバスキアをあのように集合して見せてもらえたのはありがたい。勉強になった。

東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館はレオ・レオーニ展を最後についに休館。2019年2月からの展覧会を最後に、高層階からの新宿の風景はもう見られないとのこと。新しい美術館も楽しみであるが、今は少し感傷に浸る。暑い夏にシュルレアリスム展を観たことを思いだす(2013年!)。

東京オペラシティのジュリアン・オピー展。平面や立体、映像といった垣根を無効化し、簡易な線のみで複雑に造形を生み出す。その手腕に感嘆させられた。贅沢ここにあり。

世田谷文学館で観た原田治展。2019年の展覧会の中で最も良かったと手放しで賞賛したい。作家の魅力を余すことなく伝え、今に接続した。私たちの生活の基盤、価値観の根底に原田治の描いた可愛らしい作品たちが根付いていると思わされた。

千葉市美術館の目【me】による個展も刺激的だった。現代美術にも集客力があるとは。

社会問題ともなったあいちトリエンナーレ。今さら多くを書く気はない。観たかった。その一点である。

静岡のMOA美術館では井上涼を堪能した。熱海、不思議な地である。

岐阜では荒川修作養老天命反転地を体験。暑い日だった。本来、地に平行などない。この当たり前さを、新たに生み出す蛮勇。

神戸で開催されたTRANS-KOBEは面白かった。今後の発展(?)に期待したい。

しかし実は、千葉市美術館からの帰り道に、ミスタードーナツで見たねむの木学園のほんめとしみつ氏の絵が忘れられなかったりもする。

来年はどんな美術を観られるだろう。楽しみである。