「しきじ」へ行った。
と聞いてピンと来る人はサウナ好きである。あるいはドラマ「サ道」をご覧になったか。
しきじとは、静岡にあるサウナの聖地のことである。
ドラマ放映の一週間前、つまり予告編を見た直後にしきじを訪れることとなった。なんとも絶妙なタイミングだ。
雑誌やブログで馴染みのある看板を目にした時、私は思わず「これがしきじか」と感慨深く呟いた。その様子が妻のインスタのストーリーにあげられていた。感慨深く、という言葉がこれほどしっくりくることもなかなかない。気恥ずかしい。
水風呂の、水の柔らかさ。まるで無あるいは母の胎内、または宇宙。ととのいイスに座って半眼でまどろんでいると体が透き通ったような気がした。
これ以上言葉を費す必要もない。費したくない。
「サウナイキタイ」Tシャツを着ていたら、風呂上がりの青年に後ずさりされたのが思い出深い。
翌日、熱海へ移動。翌々日、fuuaを訪れた。
インフィニティ風呂で有名な温浴施設である。
インフィニティ風呂とは、海を臨む高層階に設置された露天風呂において、海と風呂との境目を感じさせないよう設計された風呂のことである。
どこかの国の、海沿いのホテルかなんかで作ったプールが元らしいが、日本においてはその設計が露天風呂に転用され、全国各地の施設で売りとなっている。
露天に出ようと扉を開いた瞬間、感嘆の声が漏れてしまった。湯の外に、海が広がっている。
ここのインフィニティ風呂は横に広いので、少しぬるめのお湯をかき分けるように歩き、端から端まで堪能する。
段差があるので、半身浴して海を眺む。
こんな贅沢な気持ちを味わえるなんて。思わず現代に生まれたことに感謝してしまう。
たくさんある休憩場所で、ぐっすり寝た。