Nu blog

いつも考えていること

村田沙耶香『地球星人』

去年の本ということは存じ上げているのですが、刊行直後に図書館で予約していたものが、順番待ちの結果ようやく読めたのです。最近そんなんばっかです。自分で本を買うスペースがなくて。

 

信頼できない書き手による、信頼できない社会と人間と自分自身の物語。

偉そうに「常識を疑った云々」みたいな、「今の社会の見方を変える云々」みたいなことは言えない。

明らかなのだ。この世界が奇天烈なのは。宇宙人の目を手に入れなくとも、普通が普通に変なのだ。

しかし「この世界を変と思わないのは洗脳されてるからだ」などと息巻くことは実際のところ、ない。

淡々と、変だなあと思う。自分も変の片棒を担いだりする。

片棒を担げない人にとって、変なことが普通とされている世界で、正気を保つには狂うしかないのかもしれない。

悲しいなあと思う。

子供同士でセックスをしたことが発覚した際、父親に「大人しくしろ」と言われ、「私、さっきから少しも騒いでないよ。騒いでいるのはお父さんたちだけだよ」と返事し、「屁理屈」扱いされるシーンで、とてつもなく悲しさが増す。ちなみに、この93ページ付近を境に、それまでの陰鬱な物語が唐突にユーモラスにひっくり返って、面白くなる。

 

ラストシーンをそのまま妊娠したと解釈している人がいてびっくり。飢餓による栄養失調でお腹が膨らんだと受け取っていたので、妊娠解釈は目から鱗だった。妊娠だったとしたら、この小説全部めちゃくちゃじゃないですかね。まあ、そういう読み方もありなのかもしれん。

 

にしても「すりぬけドットコム」ですか。何かモデルにしたサイトがあるんだろうか。気になって検索しても、何も出てこない。もし、村田沙耶香の創作の1つなのだとしたら、すごいなあと思う。