5月の平日、有給休暇を取得し、美術館をぐるぐるぐるぐる参った。
・東京都博物館「クリムト」展
「ヌーダ・ヴェリタス」「ベートヴェン・フリーズ」・・・、どこかジョジョのスタンドみたいなタイトルであり、そのとおりかっこいい作品である。
装飾のひとつひとつに華があり、キャッチーさがあり、隙がない。どう考えてもかっこいいことを提示してくれるので、「好き!」と言いやすい。クリムト、おそるべしである。
クリムト以外の周辺の画家による作品にも白眉な作品があったので、そちらも十分に楽しまれたい。
・東京国立博物館「美を紡ぐ」展
ようやく、唐獅子図屏風を見られた。
みなさんご承知の唐獅子といえば、狩野永徳による二匹の獅子だろう。波打つ毛、重厚な皮膚、どっしりとした脚のあの獅子である。しかし、後年、孫の狩野常信が対を描いているのである。恥ずかしながら、初めて知ったのですが、この狩野常信の獅子がめっぽう可愛い!
毛は波打っているというより、ほわほわと風に揺られているようで、触感もたぶんぷにぷに、あるいはさらさらしたような捉えどころのない薄さ、眼光柔らかく、ベロなんか出しちゃって犬のよう。萌え系である。
もともと室内におく屏風ではなかったとされており、いわゆる屏風作品に比べ大きく、圧倒的な存在感。家にあっても置くとこないなあ、などと庶民じみた感想がでてきてしまうほど。
この展覧会、国宝・重文目白押しで、天衣無縫の極みと言える狩野永徳「檜図屏風」、描かれた世界に迷い込みそうになる雪舟「秋冬山水図」、何がすごいんだかわからないけれどなんだかすごい久隅守景「納涼図屏風」、適当に書いてもセンスあります、みたいな尾形乾山「八橋図」などなど、すごいのである。
そのほかにも、切った西瓜の表面に置いた和紙の透け具合描写が異常な葛飾北斎「西瓜図」、一大エンターテインメント長沢芦雪「花鳥遊魚図巻」、めっちゃ強そうな谷文晁「虎図」、ザ・龍って感じの横山大観「龍咬躍四溟(りゅうこうしめいにおどる)」(このタイトルで検索すると馬鹿よ貴方はの平井ファラオ光のブログが出てきてびっくりした)など、見所たくさんで、はしゃぎっぱなし確実である。
ピュリスムってのをやってたのはわかったのですが、途中からキュビズムに取り込まれちゃって、何が何だかでした。やりたいことはわかるんですけどね、そしてキュビズム大好きおじさんとしては、その試みの意義も大変よくわかるのですが、どこか新鮮味を感じなかった。
常設展、行くたびに新しく所属された作品がたくさんあって、本当に質の高い美術館。
ハンマースホイの「ピアノを弾く妻イーダがいる室内」、この画家のことを知らないのだが、画題や雰囲気はフェルメールのようなオランダ風俗画でありつつも、ナビ派のような神秘的なムードを持ち、特にボナールのように親密な日常を描いていて、画面から安定した心地よさが漂っている。
ブーグロー「音楽」、画面の下に「ゲスの極み乙女」などと書かれていたら、アー写のような人物配置。たぶん、天上人らが音楽を奏でる神話的な風景。しかし、物語の一場面を描いたものではないようであり、コンテクストを離れた浮遊感に見入ってしまった。
マルケ「レ・サーブル・ドロンヌ」、見事な色合いの海。波打ち際の美しさにも感動。
レジェ「赤い鶏と青い空」、鳥が可愛い。
以上、ひさびさにみっちり美術に触れた1日でした。