小学二年生くらいのはずである。甲子園球場の近くだったはずである。私がタピオカを初めて飲んだのは。
母親に連れられて、小さなお店に入ったはずである。それは熱い夏の日のことだったはずである。
一九九〇年代にもあったタピオカブームの時のことだったのかもしれない。
私は容器から透けて見える丸い粒々に、生理的な嫌悪感を覚えつつ、恐る恐る口にするとネチャっとしているもんだから、もうダメだった。
私は半泣きでその容器を母親に返したはずである。
確か、母親に「どないしたん」と聞かれて「カエルの卵」と答えたんである。
それ以来タピオカに恐れを抱いていた私なので、このほどの第二次(?)タピオカブームも好ましいものとは思っていなかった。
やっぱり容器から透けて見える黒い粒々にゾッとしてしまうのだ。
でもそれを妻が好むので、この間ついに飲んでみた。
ほら、大人になったら食べられるようになったものって結構あるでしょう。
シソとか、パクチーとか、梅干しとか、ユリ根とか、そういうもの。
で、案の定、タピオカ飲めました。
黒糖タピオカというものをチョイスしたからかもしれませんが、ほんのり甘くて、お餅のようで。
ただまあ、量が多く、お腹が重くなってしまうので、途中でギブアップしたけれど、若者ならペロリなんでしょう。
あるいは家に帰ってから「私晩御飯要らんわ」とか言って、母親にブチ切れられるんでしょう。
まあ、わざわざ好んで飲むでもないですが、こうしてまた一つ食べられるものができてしまって、私は私に呆れてしまうのでした。