三年も同じ部署にいて初めて飲みに行く人、なんてのはざらにいるが、その日私は役職は上ではないけども、当部署において重要な人と飲むことができ、ささやかな達成感を味わえた。
それなりに大きい会社になると、その部署でこの人は押さえておくべきだという不文律もあって、三年かけてようやくそうした重要人物と顔見知りになれたんだなあと感慨深くなったのである。
早い人なら一、二ヶ月で取り入れたかもしれないが、私はぼんやりしているし、本件も狙って達成できたことではないから、中期的な年月の末に、巡り合わせでなされた幸運な出来事だった。
しかし、もしかしたらこの部署から私は四月で出ていくかもしれない。となると、せっかく築いたこの関係も砂上の城と化すのか。
むろん、いつかまたヘッドオフィスに戻った際には有効な人脈となるのだろう。
人脈なるものの胡散臭さをいまだに信頼できないでいる私は子どもだ。
それを信じられて初めて人は大人になる。
今宵はやけに人とすれ違う夜だ。
あるいは、その人の心霊体験をいくつか聞いたからかもしれない。