柴田聡子の『愛の休日』は美事なアルバムだと今さらのことを。特に好きな曲について少し。
・後悔
「あ、きた」という小さな心のさざめき。「背すじを伸ばして」&「気もちをおさえて」準備するそのワクワク感。それらが弾けるように「暗闇の中で踊り出す」と大波に。その跳ねの高さに、何度聴いてもノッてしまう。
・大作戦
「ひっぱり合うひもこっちが強けりゃそっちも強くなる」という歌い出しに引っ張られ、「世界の中に私がいる」ことへの不思議さへといきつくような歌詞。私が生まれたことで、世界は私一人分重くなったのかもしれないけど、たぶんその分をどこかで釣り合わせてくれているのだろう、なんてことを思うような。どこか不安定な感覚を持っていても、「この作戦、大成功する予感」と無邪気な自信を持ち、「チアガールがいる」「応援団がいる」とポジティブな様は可愛らしい。が、世界には「野次馬」も「怖い人」も「好きな人」もいる。そんな全てを含みながら「100m9秒で走る予感」で、疾走するのだ。
・あなたはあなた
この歌詞の美しさはなんなんだろう。伸びやかな歌声が響く。
おみやげなんにも買ってこないで
いい匂いだけで帰ってくる
お母さんも知らないような香り
わたしはわたし
あなたはあなた
・遊んで暮らして
肯定的でもあるし、否定的でもある、相反するものが同居する魅力がある。「はじめて好きなところに住んだ」という歌詞は、実家→同棲→別れからの一人暮らしを想像させる。でも、好きなところに住み始めたのだ。
最後の陽気なメロディが、哀愁を感じさせる。
遊んで暮らして思いつくのは
らららとるるるとらららだけ
「らららとるるるとららら」があれば上等かも。
・忘れたい
どことなく荒井由実の「翳りゆく部屋」を想起させる歌詞だと感じた。薄っすら、ぼんやりと私たちは互いの存在を認識しあってる。
もらいものだけで生きてる興奮
神様指差しわらってる
命ももらいもの、記憶や気持ちももらいもの、なのかもしれない。
・さばーく
アルバムを通じて、一番重要なワードはこれでは?
あるのね世界に
まさか世界が
世界があると認めることの難しさ。
星野源が何かをつかんだかのようにテンポを上げ、アルバム「YELLOW DANCER」を作り、「恋」を完成させたように、柴田聡子も何かを掴み、とんでもなく売れる、という予感がする。
無料ライブに行って、サインもらいました。嬉しい。