Nu blog

いつも考えていること

詩二篇「電車に関する」

○通勤 乗り換えるために走るあの人も 夜はゆっくり寝たのだろうか 眠れぬ夜を数え 電車に飛び乗る日々だとすれば…… 満員電車で扉付近に身を固めるこの人も 昨夜の満月を眺めただろうか 一日顔を下に向け ブルーライトに照らされる日々だとすれば…… 人間 うま…

日記

11月。区による男女共同参画セミナーに参加し、社会学者で男性学を専門とされている田中俊之先生の講演会を聞いた。 「らしさ」をテーマにした講演会だった。 周囲を見渡した限り、同年齢(30代)や年下と思われる人はほとんど見当たらなかった。zoomでご覧…

詩二篇「あなた」

○あなた 起居を共にし 時に口づけを交わし 性器を重ね合わせる あなたと 寄り添うと 笑った時の肩の揺れを感じる TVを見ている あなたの どんなところで お昼を食べているの? 電話を取った時の メモ帳は裏紙? 玄関の扉開けたら そんな質問忘れてしまうけ…

ブックオフ大学ぶらぶら学部立読み暇潰し学科

考えてみれば、私の人生はブックオフから始まった。 あれは私が中学三年生の頃。祖父母の家近くにブックオフができたのである。時はブックオフ絶頂期、2004年のこと。 新規開店に釣られてそこを訪ねた母親が、「追悼 中島らも」特集のワゴンにまとめられた本…

詩二篇「労働」

○膂力 お世話になっておりますと ためらうことなく 言えるように なった秋の日 その頃の私の おろかさが いまの私を くるしめる おろかであり続けている ここから先は 私の仕事じゃありません と (誰の仕事かわかりません と できないことが増えていく 文字…

最近のこと

柴田聡子の「雑感」はすごい。初めに聞いた時は、くるくると話題の変わる歌詞だなあと感じていたのだが、何度も聞いているとそこに一つのつながりがあるような気がしてくる。実際にそれを言葉にするのは難しいのだが、その一行と次の一行につながりがあるこ…

六甲ミーツアート2021

さて、今年も六甲ミーツアートに行ってきました。開催して間もない9月中旬のこと。台風の過ぎ去ったその日だったからか人が少なく、そして暑かった。 今年で12回目の開催。すごいことだ。こうやって長く続けられたのは、単に運営サイドの努力であって、毎回…

詩『第四十九回衆議院議員総選挙に寄せて』

Ⅰ ひやり 体育館の空気 緑色のマットの上を土足でゆく 選挙券を渡し このような簡易な確認で 私が有権者だとわかったのか 訝しみつつ 私は正当な有権者 と胸を張る 歴史の先端に位置し 投票用紙を受け取る 市民の一人として 柔らかな鉛筆の書き心地を楽しむ …

スケッチ(パニック)

別に誰も気にしてないと思うんですけど、今月から、週二回ではなく、一回の更新にします。 毎日が慌ただしい。いつもトラブっていて、あちこちに電話をかけて、頭を下げてなだめすかして、頼み込んで、拗ねたり脅したりしてる。お祭り騒ぎのような職場で、朝…

九月末のこと

別に誰も気にしてないと思うんですけど、今月から、週二回ではなく、一回の更新にします。 さて、九月の末日の二つの出来事を書きたい。 一つ目は秋分の日に松陰神社前駅に行ったこと。目的は、DE CARNERO CASTEというカステラ屋さんで開かれていたイラスト…

スケッチ(ぬいぐるみ)

別に誰も気にしてないと思うんですけど、今月から、週二回ではなく、一回の更新にします。 風呂上がり、いつものように「こすらず落とす!バスマジックリン」を手に取って、浴槽にかけたときだった。僕は今日Nが僕をバカにしたような目で見てきたことや資料…

相撲

国技館で大相撲秋場所初日を観覧した。昨年の九月場所以来の国技館。 昨年九月は、観客数の上限2500人としており、マス席は四人ではなく一人で使用することとされていた。かなり神妙な雰囲気で、歓声のない静かな場所だったことを覚えている。神聖な雰囲気が…

スケッチ(愛校心)

隣の部署にいる後輩が同じ大学だと知ったが、こんなご時世で飲みにも行けない。一緒に校歌でも歌いたいと思ったが、聞いたら校歌を覚えてないらしい。どうも母校愛に差があるようだ。 でも大学時代の友人は後輩の方が多いみたいで、今でも学祭に訪れたりする…

人新世

田上孝一『99%のためのマルクス入門』と斎藤幸平『「人新世」の資本論』を読んで、マルクス漬けである。 どちらも同じようなことを言っている。環境変化によって地球が終わりかけている。資本主義を保ったままでどうにかできるわけないのだから、社会主義を…

スケッチ(ある博物館にて)

北海道、札幌から電車に乗って一時間四十分。人気のない駅前、ゆったりと作られた道路をなんどか右左に曲がり、大きな道路沿いを行くと、夏の晴れた日のような薄い青色の建物。円柱形のてっぺんにはとんがり屋根。定規で書いたような窓が二階の位置を示して…

三田三郎『鬼と踊る』感想

私たちはたくさんのことを見落としている。毎朝の通勤路、いつもすれ違う犬とその飼い主、同じ電車に乗った人たち、職場の窓の向こうに見える謎の鉄塔。汚れていくカーテン、へたれてゆく布団、少し傾いている本棚、テレビ台の裏に溜まる埃。ちょっとずつ疲…

スケッチ(蔓延)

みんなで手分けしましょうと言ったら上司に睨まれた。いや、それは違うだろ、これはあいつらの仕事だから、俺らはやれないよ。わざわざ冷たく言い放った。打ち合わせの帰り道、お前な、ああいう仲良しごっこみたいなのやめろよ、ちゃんと分担しないと後で痛…

日記

8/15 笛美「ぜんぶ運命だったんかい」を読む。郵便局のエピソードで冷める。そんなこと言う金融機関の人間はいないと思う。でもいたんだろうから仕方がない。文章というのは何もしなければどんどん暗くなる、とは保坂和志の言葉だったと思うが、この人の文章…

スケッチ(視点)

実は私はサウナが好きではない。けど、彼がサウナ好きで、勧めてくるから、入ったふりをした。それがダメだった。もちろん私がダメなのだけれど、銭湯のロビーでホカホカしている彼に「すごくよかったよ」なんて言ってしまった。それで彼はしょっちゅう銭湯…

ダサさ

フジロックを辞退した折坂悠太のこととか、パラリンピックの片翼の飛行機のメタファーとか。アフガニスタン情勢とか、自国の兵隊が殺されたら敵国の一般市民含めてドローンで空爆するアメリカのメンタリティとか、自国民退避のみできた日本の外務省のこと。…

スケッチ(夏の終わり)

松任谷由実のHello, my friendを聴きながら、秋の訪れを感じるような夕暮れ時、部屋の中でくれなずんでいた。 よくよく考えるとやっぱりこんな情景は私の人生には存在しない。君に恋するような、気まぐれで短い夏。ない。夏の私はいつもだらけている。アイス…

大運動会について

いまさらオリンピックのことについて書きたい。 東京2020のこととしてはそこまで書きたいことはない。新種目の中でもスケートボードとクライミングは大変おもしろかった。スケートボードの緩やかな祝祭的ムード、自分がどうありたいかという生き方としてのス…

スケッチ(欲望の形)

中央線に乗りながら松任谷由実の中央フリーウェイを聴いていた。出だしに流れるびゃ〜〜んという謎の音。車だからか、電車よりも少しゆっくりとしたテンポで曲が進む。ネオンサインやトロピカルツリーなど、わたせせいぞう的おしゃれさが思い浮かぶ。私にも…

本谷有希子『あなたにオススメの』

本谷有希子『あなたにオススメの』はなんだか毎日に苛立っている皆様に送るディストピア小説集である。 体内にマイクロチップや電子機器を埋め込み、常にオンラインで繋がることが普通の社会を描く近未来SF「推子のデフォルト」と高層マンションの最上階に住…

スケッチ(DESTINY)

松任谷由実のDESTINYを久々に聴いた。ストリーミング配信の、無料体験に登録して、何を聴こうか悩んだ時に、松任谷由実と検索していたのだ。 軽快なイントロに思わず頭を揺らしてしまう。ユーミンが歌い出して、かっこいいギターがジャガジャーンと鳴る。「…

大相撲

七月場所、おもしろかったですねえ。本当に面白かった。え? 今頃? はい。いまさらです。オリンピックよりも相撲。日本人たるもの一年中相撲のこと考えてるでしょうが。さてはあなた反日的な人ですか? むちゃくちゃな言いがかりからスタートしましたが大相…

スケッチ(熱狂)

湯島がオリンピック選手が名前を呼び上げられた時のようにTシャツに書かれた「ATARAYA HIGH SCHOOL」の文字を人差し指でなぞったので笑ってしまった。 「なんよ」と湯島が不思議そうに言うので「かっこよかったで、いまのん」と僕は矢島の肩を叩いた。ふん、…

『サムジンカンパニー1995』

映画『サムジンカンパニー1995』を観た。 1995年の韓国、グローバル化を進める財閥企業で働く高卒女性社員たちの物語。高卒女性社員は、大卒の補助扱いで、彼らのためにコーヒーを入れたり、買い出しに行ったり、クリーニングを受け取ったり、雑用係。でも、…

スケッチ(路上喫煙)

マンションの脇にある階段は、確かにこのマンションの敷地ではなく公道だから、毎週水曜日と金曜日の20時頃に、小太りのおじさんがタバコを吸っていても、この地区には路上喫煙を防止する条例がないので、何の問題もないと言えばなんの問題もないのだが、マ…

金原ひとみ「アンソーシャルディスタンス」

金原ひとみの『アンソーシャル・ディスタンス』は、人間の惨めさ、哀れさを一身に引き受ける人たちの小説だ。私たちの多くが、上手に目を逸らしたり、あるいは圧倒的に鈍感に生きることでやり過ごしている人間の惨めさ、哀れさを、事もなげに突きつけてしま…