Nu blog

いつも考えていること

スケッチ(ファックス)

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ファックスが届いた。私は明かりを消した部屋の中、光るディスプレイを見た。ファックスが届くなんて、何十年ぶりのことのような気がした。

二枚印字されて出てきた。後から出てきた一枚には「大型犬の日のご案内」とタイトルがあり、私の知らない団体が、私の知らない公園で、一ヶ月後の午前中催し物を開催する旨が記載されていた。できれば自身の愛犬を連れて出席するよう書かれており、難しければ買主のみ単独の参加も構わず、また小型犬、中型犬の参加もウェルカムとされていた。参加費は公園の使用料、写真撮影費、他諸雑費のため千五百円とされ、好意による寸志歓迎とのことだった。先に出ていた二枚目は、「Day of large dog」という装飾文字と、大型犬のイラストがいくつか描かれているフライヤーだった。どの犬がなんという種類かは私にはわからなかった。

私は千五百円を払い、まるで犬を連れて来られなかったふりをして、この会に参加してみようかと思った。他人の犬を撫で、今度はうちの子も連れてきますよー、今日は体調悪くて主人に診てもらってて、などと平気で嘘をつくのだ。

夕方が終わり夜になってしまった。この長い夜を、私は妄想の犬、空想の夫ともに過ごしてみることにした…。