Nu blog

いつも考えていること

闇の中からの笑い声

昨年十二月の初めに宇多田ヒカルのライブ「Laughter in the dark」@さいたまスーパーアリーナを観た。

 


前から15列目という幸運。向こう半年くらいの運を使い果たしたのか、大相撲初場所のチケットは全滅した。

「あなた」「道」「traveling」と新旧混ぜたラインナップでスタート。冒頭二曲はここ二年常日頃聴いた曲であるから感動したが、「traveling」でノレることにより感動した。「聞かせたい歌がある」という歌詞にときめく。

「First Love」と「初恋」を並べて歌うなどの粋な演出。アンコールの「Automatic」でのイカしたギターソロ。

「二時間だけのバカンス」は演奏されなかったが、そんなようなひと時だった。

 


振り返れば、宇多田ヒカルが「First Love」を出したのは一九九九年、「HEART STATION」が二〇〇八年。私が小学生から中学生の頃こそ、宇多田ヒカルを最もテレビで見かけていたことになるのだが、その頃の私はコナンの主題歌かビートルズしか聴かない偏った人生を送っていた。

高校生の頃も教育テレビばかり見ていたので「ぼくはくま」ならよく聴いていたけれど、アルバムなどは聴いたことはなかった。

じゃあいつ聴き始めたのかと言われたら、二〇一四年のトリビュートアルバム「宇多田ヒカルのうた」からである。

音楽を聴かなかった青春を経ていつのまにやら好き好んでいろいろ聴くようになった私に、岡村ちゃんtofubeats、新生KIRINJIといったラインナップは魅力的だった。しかし、それどころか、各ミュージシャンの個性以上に、宇多田ヒカルの楽曲そのものが私にどハマりしてきた。逆流してベストアルバムをつまんでみれば、不思議なことにどの曲も知っている。

とうやら関心を持たなかった間にも、メディアを通して宇多田ヒカルの音が、私の耳にじっくり残っていたようである。

よくよく振り返れば、木村拓哉主演の「HERO」や上野樹里などが出てた「ラスト・フレンズ」(錦戸くんが怖いやつ)、ヱヴァンゲリヲン新劇場版など、主題歌となったドラマ映画は大抵観ていたし、キングダムハーツLISMOカップヌードルのCMも気づかないうちに浴びるように見て聞いていた。

門前の小僧習わぬ経を読む、というやつで、刷り込まれていたわけである。

そして二〇一六年「Fantôme 」をリリース。朝ドラ主題歌「花束を君に」や歴史的名曲「道」、「人生最高の日」などハイクオリティな名盤である。

この時からずっとライブを待ち望んでいたが、二〇一八年「初恋」を機にようやくライブが開かれることと相成った。

長かったような、短かったような二年である。

 


宇多田ヒカルの音楽には、祝祭感がない。

表されるのは特別な何かではなく、日々の機微。

淡々とすぎる日常と不意に訪れる喜びや悲しみ、楽しさや優しさや苛立ちや妬み、そんなものをないまぜにした、「私にとってだけ特別」なさりげない起伏。

こんな音楽のある世界に生まれてこられてハッピーだ。