Nu blog

いつも考えていること

活動報告(8月末から9月にかけて)


・美術館

目黒区立美術館「フィンランドの陶芸展」、東京オペラシティアートギャラリーイサム・ノグチ展」、東京都美術館藤田嗣治展」と「BENTO展」、東京都写真美術館「TOPコレクション」と「杉浦邦恵」に行った。

フィンランドの陶芸。真っ先にマリメッコが思い浮かんでしまうものだが、マリメッコは最後の最後しか出てこない。最初はぜんぜんフィンランド感がなく、途中はめっちゃ前衛的になる。その前衛的な陶芸が、国立の工房で造られていたりするから驚く。国を挙げての陶芸芸術、というわけだ。

イサム・ノグチ。最後の年表を見ていると、計画したもののなかなか採用されず、理想の彫刻(公園や広場)にたどり着けないもどかしさがある。ぼんぼりというのか、行燈か、に触発された照明はおしゃれ。めちゃくちゃでかいのを作っていたり。その他彫刻らにもおしゃれがたくさん。美しくないような、機能的でないような、非効率的に見えるような、それらなのだが、もしかすると日常にあっても違和感がなさそうな、むしろとてもおしゃれで、センスフルなものとして、生活を彩ってくれそうな、そういう作品なのだ。

藤田嗣治。初期のキュビズムは初めて見た。こういう試行錯誤もあったのか。留学前の葛藤などはいろいろ聞いたことがあったし、乳白色へ行きつくまで厳しい生活だったことも知っていたが、キュビズムを試していたという事実は知らなかった。さて、藤田嗣治の展覧会を、ぼくは2006年に見たことがあるはずで、それは母親と京都に行ったのだと思う。クリアファイルを持っている。あまり覚えていないのだけれど、とても大切な思い出のようで、藤田を見るといつもその時のことを思い出そうとしてしまうが、やっぱりいまいち覚えておらず、クリアファイルしか思い出せない。

BENTO展。不思議な展覧会でした。よう分からんけど。

TOPコレクション。思いがけない瞬間、楽しそうな瞬間、ほっこりするような写真など、写真美術館は楽しいし、安心できる。そして、自分でも写真を撮りたくなる。人が写っている。この人たちは実在した。その時何か考えていたり、何も考えずにいつも通りの行動を取ったりしていた。そのことがなんとも愛おしく思える。

杉浦邦恵。作家のこれまでの様々な取り組みがまとめられていた。キャンバスに現像してみた作品や影のポートレートなど、おおっと思うものもたくさん。でも、展覧会の外にあった映像作品が一番良かった。特に「タバコ」と題された映像作品。10分程度のものが3つあって、最初の10分は私はなぜタバコを吸うのかとか、そういう煙草にまつわる所感を何人かの喫煙者が語るもの、2本目の10分はニューヨークとかでタバコを吸っている人ただ映しているもの。3本目はどうやら青森でタバコを吸っている人をただ映しているだけのもの。つまり後半20分は会話はなく、ただ煙草を吸っている人が映っているだけ。何のことはない30分なのだが、やたら引き込まれた。ぼくだけでなく、何人かの人もじーっと見入っては、10分経って画面が暗くなった時に目が覚めたように立ち上がっていた。思わずじーっと見てしまったことに驚いているようだった。なんなんだろう。本当に煙草を吸っているだけの映像で、すごいこともおもしろいこともなにもない。年齢、性別、職業、そういうものに何の統一もないたくさんの人が、おいしそうでもなく、楽しそうでもなく、リラックスしているでもなく、タバコを吸っている。タバコを吸っている間、その人の時間は止まっているみたいだけれど、周囲の人は歩いていたり、なんかしている。そのギャップが面白かったのかもしれない。

これから年末にかけて怒涛の大規模展覧会目白押しである。フェルメールムンク、ボナール。楽しみですね。

 

・サウナ

上野「サウナ・カプセルホテル北欧」。風呂場全体が割合狭いので、あらまあなんて思っていたら、サウナと露天風呂は広々としていました。水風呂はちょっとぬるかったかなあ。露天風呂わきに置かれた寝そべれるベンチでの外気浴が心地よかった。まんしゅうきつこと舘ひろしのサインが飾られていたのが印象に残った。

赤坂「サウナリゾートオリエンタル」。15度を常にキープし続ける水風呂、100度近いサウナ。ストイックな空間。和柄がたくさんで、ちょっとそれだけ怖かったけど、過ごしやすかった。休日昼間というのが良かったのかもしれない。平日夜は割と人が多そうな気がしました。水風呂、キリリとしてて気持ちよかったです。

鶴見「ユーランド鶴見」。休日の午前中のうちに着いたら、割合人が少なくてよかった。午後に差し掛かった途端人が増えたので、驚く。広いサウナ。100度近くに保たれていて、かなり来る。一応表示では9度と出ている水風呂。最初17度だったので、なんとなく訝しく思ってるのだが、入ってみると確かにキーンとくるので、9度かもしれないし、良い水質の17度かもしれない。まだ水風呂の温度を図れるほど熟練ではないので何が本当か分からないが、ネットで見ると9度らしい。すげーな。露天の寝湯。最後に熱々の温泉に入ったら汗が止まらなくなってしまいました。年齢層が高く、風呂上り、3階に上がると銀座の恋の物語が聞えてきた。宴会場らしい。4階のレストルームで少し寝てから帰った。

鶴見「RAKU SPA 鶴見」。追加料金なしで6種類の岩盤浴に入れる。それで土日でも2000円以下なのだから安い。岩盤浴の温度もいい感じで、もっとずっといたかったが、館内着の替えがないので、あまり汗をかきたくない。なんかそのあたりのさじ加減が難しい。サウナは10分ごとにオート・ロウリュ。1段目は80度くらいで、最上段は90度くらい。100度近いところばかり行ってたから、優しいサウナに感じた(髪が燃えるような感じがない)。水風呂は17度で、余裕かなと思っていたら炭酸水風呂なるもので、股のあたりがしゅわしゅわした。気持ち良い水風呂でした。露天も充実。午後から人が増え始めそうだったけれど、十分な収容力がありそう。ここにも休日の朝一番に行って午後一で帰ったので、その後の満員ぶりは分かりません。ユーランドと違い、家族連れやデートらしきカップル、女子会といった若年層でわいわいしている。イベントも盛りだくさんで、おもしろい施設です。次は誰かと行きたい。

 

・山登り

群馬の山に登った。難易度低め。天気予報を裏切ったはいいものの、雨が降るどころか、暑かった。汗がボロボロ出た。ここまで汗だくの登山は初めてだ。山頂で飲んだコーヒーが美味しかった。周りが山だらけ、なぜか懐かしく感じるその景色が、好きだ。

 

・音楽

Perfume「Future Pop」。「Tiny Baby」から「Let Me Know」、そして「超来輪」の流れはきゃりーぱみゅぱみゅの1stや渋谷系を強く打ち出していた初期capsuleのよう。聴いたことのある安心感とそこはかとない珍奇さが混じる。かつメッセージ性というか、歌詞が前面に出ている。かつて3rdアルバム「JPN」において、ライフステージを進めるアイドルであることを予感させてが、本作は「Tokyo Girl」にその側面があるものの、「夢」に対する言及がどんどん増えて、アイドル回帰の流れを加速化させている。あるいは現代の30代が夢を持たなければ日々を進められないほど疲弊しているのか。「平成最後のアルバム(またはライブ)」というリミットに焦った感はなきにしもあらず。予告された終わりの先には、どうしても乱痴気騒ぎ的祝賀しかないように思うが、Perfumeはそれに乗っかっていくのか? つまり、東京オリンピックという狂騒に飛び込んで行くのだろうか。個人的にあまり乗り気になれないが、全体には中田ヤスタカ健在の良作揃いのアルバムです。

Future Pop(通常盤)(DVD付)

Future Pop(通常盤)(DVD付)

 

やくしまるえつこ「あたりまええつこのうた」。なんじゃこれ!楽しい!可愛い!最高!とくに「きゅうばん」。ギターがめっちゃ相対性理論。「よんばん」の「むにゃむにゃ」、それから「ななばん」の最後のため息。「ろくばん」もまた名作です。悲しいメロディー、悲しい気持ち、音と音のコンビネーションの発明。

あたりまえつこのうた

あたりまえつこのうた

 

The Wisely Brothers「YAK」。「キキララ」が好きなんですが、「マリソン」もいい。チャットモンチー感を指摘されることもあるみたいだが、3人組ガールズバンドの宿命でしょう。そんなに重なる部分はないと思う。オリジナリティ突き詰めて現代にぶつけてください。

www.youtube.com

YAK

YAK

 

・本

宮本輝「生きものたちの部屋」。家族なんかに怒鳴り散らすおっさんな宮本輝先生。様々な愛着を語った最後、阪神大震災が訪れる展開は自然の偶然とはいえ、胸が痛くなる。

生きものたちの部屋

生きものたちの部屋

 

村上春樹「蛍・納屋を焼く、その他短編」 。ひさびさに突撃隊のエピソードを読んで、なぜか安心した気持ちに。モヤっとした短編だけど、なんというか短編のお手本のような、綺麗なまとまりがあって、安心して身を委ねられるという感覚。面白くないことがないのがすごい。

螢・納屋を焼く・その他の短編 (新潮文庫)

螢・納屋を焼く・その他の短編 (新潮文庫)

 

小川たまか「「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。」。この本は残されるべき本だと感じた。ぼくらが生きた2016年から2018年の馬鹿さ加減を描いている。心抉られながら、読むしかない。

「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。

「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。

 

松樟太郎(まつ くすたろう)「究極の文字を求めて」。なぜか時折相撲ネタが挟まれるのでうしうししてしまう。うしうし、ってなんのこっちゃわからんが。世界にはたくさんの文字がある。文字オタクな作者による文字紹介。おもしろいなあ…。

究極の文字を求めて (手売りブックス)

究極の文字を求めて (手売りブックス)

 

星野智幸「焔」。うわ、すげえ。としか言いようがない。世界大相撲共和国杯なる最終章は白鵬から着想を得ているそうな。なんかね、いいよね。こういう妄想。友達と他愛なく話す世界が開陳されていたので、突拍子もないこととは思えず。「そうそう!」って、物語に対して友達相手のようにうなずいたりしてました(異端…?)。

ほか短編が繋げられて一つの焔となる。

なんだか話が噛み合わなくなる「木星」は、身近にありそうな世にも奇妙な物語。数年会ってない相手からネトウヨになってたらやだなー。人間が貨幣=人貨となる「人間バンク」。自分の父親を捨てる「何が俺をそうさせたか」。現代日本の風刺と感じてしまうと、どうにも辛くなる。いつかこの話が風刺でもなんでもない物語として読み直せるのだろうか。面白いことは分かるのだけれど、ぼくにとっては読むことが難しく感じられた(それはいい経験だった)。

焔

 

 

渡る世間は鬼ばかり

どうも幸楽の階段は急すぎるんでないか? あるいは油で滑りやすくなってるのか。滑り止めつけたほうがいいと思いますよ。被害者、お父さんだけじゃないので。

導入部はスマートなのにその後何度も同じ会話を繰り返すので、フーガを聴いているような気持ちになる。まあ、それが心地よいのですが。

いつも貴子さんが悪者になるのは、えなりかずきのせいだと思ってますが、渡る世間をみているといつも親側の気持ちになってしまう。橋田先生の押しの強さに負けちゃうんですな。

ツッコミどころを何個か。あの医者になりたいって人は他人の小さな居間で大声張り上げすぎでは。たぶん次回スペシャルで、ちらっと顔出すだけなんだろうなあ…。日向子にフラれた青年の当て馬感。可哀想すぎる。ひなちゃんは21歳?店を1人で切り盛りしてんだから、すごい21歳だよな。雑誌のインタビューとかきそう。ていうか、ひなちゃんが「長男は嫌」と言ったから貴子さんが許されるって、なんじゃそりゃ!な展開も橋田壽賀子先生なので、アリです。

 

その他にもたくさんあった気がしますが、こんなところで終わり。そういえば、なぜかモーツァルトのピアノ・ソナタ K545が頭から離れない時があったのはなぜだろう。さて、気づけば、10月です。ぼくは10月が好きです。