PUNPEEの1st Album『MODERN TIMES』がかっこよい。
拙いヒップホップの知識ではあるが、始まりから、全編通してRhymestar『ウワサの真相』の雰囲気が感じられる気がする。
ぼんやりとした事柄を歌詞に落とし込んでいる。「一般人」とはとにかくぼんやりしているものだ。
別に俺なんかいなくてもね KOHH君、tofubeats、弟とかがいる
(「Lovely man」)
なんて言ってみるのも可愛らしい。
どんなクソゲーでも一人くらいは好きになんじゃないすかね
(「Scenario (film)」)
という小さな声は、自信と不安が同居している(それこそ一般人? あるいは「選ばれし者の恍惚と不安の二つ我にあり」か?)
今が夢の続きなら
いいとこまで俺ら来たよな
(「夢のつづき」)
生きてるだけで「いいとこまで」来てるのかもしれない。この曲、トラックがかっこいい。またしても乏しいヒップホップ知識で申し訳ないが、口ロロの2008年のアルバム『Tonight』っぽい。
今じゃ足跡どこも残るから
これは歌詞カード載せず
鍵かけておこう
ホニャラムニャラカポッポコ
ほらね聞き取れない(「タイムマシーンにのって」)
なんでも残ってしまう世の中だが、人間の持つ「文字」という記録方法は、人の発声、「聞き取れない言葉」を捉えきれない。もちろん「ホニャラムニャラカポッポコ」と記載することはできるが、それだけがこの歌詞の情報だっただろうか? 音の持つ一回性(録音されたとしても!)は、時間の一回性とつながる。
「あ、ラウデフです。」
「あっ、ど、どうしたの?」
「あ、寝てました? すみません、なんか。アルバム今やってますよね?」
「今やってる。」
「そう、それ俺もラップしたくて、来ちゃいました。」
「いやーでも、もう最後の曲とかだから駄目だよ、入れないよ。」
「だめとかないじゃん、普通。」
「ははははは」(「Bitch Planet」)
この曲も口ロロっぽいトラックだと思った。「だめとかないじゃん、普通」という、ささやかな名言。
アルバムとは違いますが、これ、めっちゃかっこいいです。
先述の歌詞にも登場したtofubeatsが5月に発表した『FANTASY CLUB』もこの半年ずっと聴いている。特に「BABY」。
どこか遠くに行きたいけれど
なぜか行けないのさ
どこか遠くに行ったところで
動けないのさ
という閉塞感が私たちを襲うが、ドキドキを与えてくれる「君」の優しさに、何か乗り越えられそうな予感に包まれる。
この「君」は何も異性のことだけでないだろう。画面の中のキャラクターのことかもしれないし、仕事や趣味のような何か夢中になる対象そのもののことのようにも思える。星野源の『恋』にある「ふたりをこえてゆ」くものと通ずるものを感じる。
ドキドキは今以上のBABY
しかしドキドキは予感でしかないことにも注意したい。アルバムは『FANTASY CLUB』だ。幻想で終わってしまわぬように、導かれたその先へは自分で歩いていかないといけない。