コンビニのエロ本って誰が買うのだろう。
どうして単身者の少ない団地やマンションにエロいチラシが入れられていたのだろう。
不思議だなと思ったとしても、なぜか不思議と言ってはいけない雰囲気もまた不思議。
エロいものは子供に見えないところに置いてほしいという漫画を描きました。 pic.twitter.com/hVXgtF3qJn
— 小林ギリ子 (@kobayashigiriko) 2017年3月10日
ぼくはマンションに住んでいて、そういうチラシには覚えがある。いつの頃からか、たぶん防犯カメラを付けたあたりから、なくなったけど。
漫画と同じシチュエーションで、買い物帰り、母親の手がふさがっているから、郵便受けの中身を取ってくれ、と頼まれて、何が入ってるかなーとワクワクしながら中をとったら、いかがわしい小さなチラシが入っている。
子供としては「これはあかんやつ」くらいの直感が働くものの、どうしたらいいのかわからない。
集合ポストの脇に置いてある、不要なチラシを入れるためのゴミ箱に、そのチラシが積み重なっている。
でも、捨てる、という判断がうまくできない。それどころか、子供の好奇心として、捨てたいけど、じっくり見たい気もしている。
たぶん、母親はこういうチラシが嫌いだろうとも感じる。
悩みに悩んで、他のチラシとチラシの間に挟んで気づいていないふりをした。
そんな埋もれていた記憶を、今さら思い出すとは思わなかった。
ぼくは鈍感なので、好奇心と羞恥心との間でウロウロしたくらいだが、漫画のように羞恥心が勝つ子もいるだろう。
子どもだけでなく、母親はそのチラシを見てどう思っていたのだろうか。不快に思っただろうか、何も思わずオートマティックに捨てたのだろうか。
他の子どもたちは、他の母親たちは、そして他の父親たちは、どうしていたのだろうか。
に、しても、このツイートへのリプライ(返信)がひどいのが気になる。
それよりも夕食時に流れる生理用品とか下着のCMに文句言えや
そっちの方が悪影響
法律上問題ないから置いてある。エロ本も何でもあるからみんなコンビニを利用する。其処にある必要が無いと言えば他の商品も全部同じ。
自分がセックスして子供産んどいて何が怖い話だよ
ほっといてもどうせネットや先輩からエロい事教えられるんだから別に良くね
自分はその嫌がってる性行為のおかげで子供を授かってるのに何を言ってるの?
ただ対策したらどの様なメリットがあるのか、そのメリットはデメリットよりも大きいのか、具体的にどの様な対策をするべきなのか等を描かなければ「私が不快に思うから規制してほしい」という主張でしかないので、万人に同意してもらうのは難しいでしょうね
女性向けの性的な漫画も氾濫していることから目を背けてるな
いつものことながら、女に対しては被害者意識を、男に対しては反省を押し付けようとする態度が図々しい
「どうしてこんなものを普通の家に入れるの?」逆にどこならピンクチラシ入れても良いというのか
そもそもたかが小さなチラシ1枚に動揺しすぎ
母親にチラシを知られたくなかったのなら自分が見なかったフリして誤魔化してしれっと捨てておけば良かろうに
どの反論にも、不思議なほど共感できない。
生理や下着は風俗や性欲とは何の結びつきもないし、
法律上許されてることは問題の本質じゃないし、「コンビニってエロ本でもなんでもあるから便利だよね!」なんて思ったこともないし、
子どもを産み育てることと風俗は繋がっていないし、ネットや先輩から偏った不確かな性知識を得ることは推奨されないし、
メリットとデメリットなどともっともらしいことを書いているけど、「自分は不快に思わない」が根拠の強気な口調でしかないし、
女性向けの性的な漫画の「氾濫」ってのが何を指しているのか分からないし、それらはコンビニに売っていないだろうし、
どこの家にピンクチラシを入れればいいのか、なぜこちらが考えないといけないのか分からないし、しれっと捨てておけるような子どもってどれくらいいるのだろうと思うし…。
この人たちが、どうしてわざわざ無理矢理なことを言って反論しているのかが分からない。
コンビニにエロ本が置いてあるのは変だ、と直感的に思わないのだろうか。思わないのか。
「思わない」「納得しない」「私はおかしくない」と決めている人に伝えられる言葉はないように思ってしまう。
ぼくは「なぜこちらがわざわざ説明して、説得しなきゃならんのだ、めんどくせー」と思ってしまう。
そもそも、ネットでの言葉だけのやり取りで見知らぬ他人を説得できる、なんてのが幻想か。
しかし、言葉は求めている人のところにはやってくる。というか、求めている人には、その言葉が見つけられる。
何かのきっかけで、何かの導きで、今までの自分をがらっと変えてしまうような言葉に出会ってしまうものだし、その言葉は、その人がその言葉を望んでいる時にしか現れない。
言葉と人にそういう性質があるから、対話や議論の当事者は、そもそも自分を変えてしまうような言葉を求めておらず、十中八九、物別れに終わる。
とはいえ、きっと、それら費やされた言葉は、そのやりとりの外にいる誰かのための言葉になる、ということを信じたい。
はじめに戻って、コンビニのエロ本とかの話。そういや、スマートフォンのエロ広告も同じ話だと思う。
この漫画をきっかけとしてか今ツイッターでは「#コンビニではエロ本を売らずにおむつを売れ」というハッシュタグが流れている。
このページに対するコメントもすごい。
心が折れる。コンビニにエロ本って変だよな、という直感が揺らぐくらいだ。
そりゃあ、確かにエロ本はそれなりに売れて、おむつは売れないかもしれない。だから、コンビニからエロ本がなくなったら、コンビニは打撃を受けて、いくつかのお店は潰れてしまうかもしれない。
確かにそうかもしれない。でも、そこで「だから、エロ本をなくすなんて勝手なことを言うな」ではなくて、「どうしてコンビニでエロ本が売れるのだろうか」「そもそもコンビニにエロ本があるのは変ではないか」ということを考えないのだろうか。
エロ本の存在自体を否定したくはない。だから、手軽に手に入るなら、そこで手に入れる人たちがいることは分かる。だから、売れるのだろう。
しかし、そうした手軽さはコンビニが日常的な場所であることとイコールだ。で、あれば、コンビニ=日常的な場所にエロ本があることをどう思うのか。そのことを売る側が変だなと思わないのも不思議だし、買う側も不思議だなと思わないのが不思議だ。
女性が性的に消費されている商品が日常的な場所にある、って明らかに不思議ではないか。
買う側は売っているから買う、売る側は買ってくれるから売る、と言うのかもしれないが、売るものは店のブランディングに影響する。コンビニのブランディングにおいて、エロ本を売ることは何の問題にもならない、と言うことが怖い。
以下のツイートのとおり、エロ本がブランディングに影響しないことはイコール男性権力が優位であることの表象なのだろう。
女性が性の客体にされているヘテロ男性向けのポルノ雑誌をコンビニで表紙を見せながら陳列出来ているのも、女性の表象が男性向けの性的なものとして消費される様を公の場で隠さずにいられるっつう権力のひとつの現れなので、別にコンビニでエロ雑誌を買わない人間でも擁護する手合いが出てくる。
— hctk (@bit_box) 2016年9月5日
男性が女性を性的に消費する商品を売っていても「いかがわしい店」扱いされない国がここ日本なのだ。
だから、コンビニのブランディングとして、男性向けであれ女性向けであれ、エロ本を置く・売ることは損失であることが明らかになれば、ようやくコンビニからエロ本がなくなるだろう。
そのための方策は、企業にクレームを入れるとか署名を集めるとか、社会運動の形が様々あるだろうけれど、ぼくはそれらはめんどくさいと思ってしまうので、簡単に言えば、買う側が「コンビニなんてそんなもんだ」と諦めればいいのでは、と思う。
つまり、「いかがわしいお店」であるコンビニを使わなければいい。怖いから入らない。入れない。そもそも要らない。別にインフラでも何でもないんだし。これが、電気や水道なら困ったものだが、コンビニを使わないように生活しようと思えば、ある程度できるはず。
鬱陶しい、めんどうくさいから、もう絡まない。本は本屋で買えばいい。惣菜やお菓子はスーパーとかで。緊急に、どーしても、という時以外、コンビニを使わずに生きる。
エロ本があっても気にならない人は今までどおりコンビニを利用したらいいし、エロ本が置いてあることが嫌な人はなるべくコンビニを使わない。不買運動的な。
日和った結論かもしれない。「エロ本置いてたっていいじゃないか」派の主張にありがちな「嫌なら使うな」と同じ結論だとも思う。
でも、「エロ本が置いてあることで、店のイメージが悪化し、客足が減少、売上も減少した。なんなら、地域住民からも敬遠される」くらいの状況を作り出さないと、今のまんまで変わらない。子供たちにも「コンビニは変なとこだから行くな」と教えて、社会全体が「コンビニってエロ本売ってる店だよね、使いにくいよね」となれば、コンビニからエロ本はなくなるだろう。
そういう作為を持って「嫌なので使わない」ことを実践すれば、「嫌なら使うな」と結論は同じでも、過程も、そこから得られる結果も、すべて違ってくると思う。
近隣住民から敬遠される、なんてことを書いたけど、もしそうなったなら、場所によって、お店によって、エロ本を売っているコンビニと売らないコンビニがある、というような対応も出てくるだろう。
などと、ここまで書いておきながら、コンビニを使うメイン層は男性、単身者であって、世帯層はメインに想定されていないのかもしれないと思ってきた。
で、あればなおさら、今生きている男性・単身者の変化を期待してもしょうがないので、子どもたちの「コンビニ離れ」を推進して、彼らが大人になった時「コンビニは入りにくいから、あまり使わない」となるように、コンビニ業界全体がエロ本によって衰退するように、流れを作って…。
壮大というか、時間のかかる話だなあ…。地面の穴を掘ってたら、いつか地球の裏側に行けると信じている子どものような理屈だ…。
どうせ、エロ本があるからコンビニはもう使わないという人より、やっぱりコンビニは便利だから使ってしまうという人の方が多いのだ。ぼくが思っている以上にコンビニは需要がある。
そう思うと、ここまで書いておいてなんだが、コンビニのことなんて実際はどうでもいいな、と思えてきた。はっきり言って、めんどくせー。